“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
大分生まれ、浦和育ち、湘南で還元中。
梅崎司にとって古巣戦は「幸せ」だった。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/05/25 11:00
湘南で2年目のシーズンを送る梅崎司。古巣・浦和戦では0-2の劣勢の中でも献身的なプレーで大逆転劇を呼び寄せた。
湘南2年目の梅崎が見た埼スタ。
胸トラップまではイメージは一緒だった。しかし、相手をぶち抜けた13年前と、ブロックをされてぶち抜けなかった今。19歳の自分と32歳の自分が重なり、明確な違いが突きつけられた。
「相手が大分だったからこそ、敏感になっていたし、深く刻まれた思い出が溢れてきて、原点を見せてくれた。今、自分が課題だと思っている積極的な仕掛けや、もっと『やんちゃ』でいたい部分があるんです。もう1個先の勝負所への欲求、物足りなさを大分戦でより感じたんです。その上でのレッズ戦。大分で感じたことも重なって、いろんな思いがあった」
大分戦から1週間後の浦和戦。埼玉スタジアムでのアウェイ戦は昨年も経験しているが、これまでとは見える世界がまるで違った。
「前回の対戦時は『もう来ちゃったか』という感じだった。当時はまだ湘南に馴染んでいなかったし、自分を出しきれていなくて、意思も固まっていなかった。でも、ピッチには立ちたかった。実際にちょっと立たせてもらいましたが、守備に走ることが多かった。でもそんな劣勢の中での1-0の大金星。勝った瞬間は本当に嬉しかったし、『湘南に移籍したんだ』と深く実感した。
今年は1年間(の積み重ね)があって、チームに対する自分のあり方もまったく変わった。今は自分が中心だという自覚もあるし、かつ大分戦で呼び起こされた昔の自分もいる。過去と今を、最高の形で出し切ろうと浦和戦に臨めた」
冷静に戦えた浦和戦。
1年前の自分とは全く立場も意識も違う。湘南の選手となり、チームを勝利に導くべき中心人物と、自他共に認められるようになった。変なノスタルジーはそこにはなく、今チームのために必要なこと、やるべきこと、そして勝利に導くことに集中していた。
「試合をしながら、常に冷静にいられたんです。前半から『あ、ここで縦に仕掛ければよかった』とか、『ここでスピードダウンしてはいけなかった』とか、一瞬一瞬でどうすべきかを考えられるようになった。
同時に『じゃあ、次はここで行ってみよう』と、修正をしながらプレーできた。後半の仕掛けはほとんど“無謀行為”ではなく、いかにチームが前に進めるか、試合の流れを壊さないずに、よりチームに効力を発揮できるか、常に冷静に考えてアンテナを張っていた。だからこそ、ポジショニングもそうだし、2回も変わったフォーメーションの中で、これまでの最大限の経験値を活かすことができた。
『ここに立てば相手が嫌がるだろう』、『攻から守のことを考えても、ここにいた方がいいな』と、細かくポジションを取り直し、その上で、大分戦で蘇った相手にとって危険なプレーを仕掛けていく。いろんな経験と『やんちゃ』を求めた結果が今回の浦和戦でした」