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不屈の“聖イケル”カシージャス。
急性心筋梗塞も乗り越えられるか。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2019/05/02 17:00
現地時間5月1日の練習で心筋梗塞となり病院に搬送されたカシージャス。無事を祈りたい。
推定市場価格と“時代遅れ感”。
今シーズンのCLでベスト8に勝ち上がったチームの守護神の推定市場価格が、それを裏付けてもいるだろう。
バルセロナのマルク・アンドレ・テア・シュテゲンの8000万ユーロ(約100億円)を筆頭に、マンチェスター・ユナイテッドのダビド・デヘアが7000万ユーロ(約88億円)、リバプールのアリソンが6500万ユーロ(約82億円)、マンチェスター・シティのエデルソンが6000万ユーロ(約75億円)で続く。
そして躍進アヤックスの守護神アンドレ・オナナ、そのアヤックスに準々決勝で敗れたユベントスのボイチェフ・シュチェスニ、マンCとの激闘を制して57年ぶりのベスト4進出を決めたトッテナムのユーゴ・ロリスも、それぞれ3000~3500万ユーロ(約38億~44億円)の評価を得ている。
そんななか、唯一推定市場価格が100万ユーロ(1億2600万円)と桁がひとつ少ないのがカシージャスなのだ。
もちろん、37歳という年齢も価値を下げる要因ではあるだろう。だが、「リベロ型GKの始祖」とも言えるマヌエル・ノイアー(バイエルン)が、33歳にして、しかも近年は怪我で満足にピッチに立てない状況が続きながら、依然として2200万ユーロ(約28億円)の評価を受けていることからも、やはり“時代遅れ感”は否定できない。
GKにとって最も大切な仕事は……。
それでも──、と思う。
カシージャスのひとつひとつのプレーは、GKにとって最も大切な仕事が、敵のシュートをストップし、失点を防ぐことなのだと、改めて我々に思い出させてくれる。1対1の反応スピード、倒れてから素早く起き上がって次の動作に移行するフットワーク、そして水をも漏らさぬ正確なキャッチング。
自らの足技をひけらかすようにペナルティーエリアの外へと飛び出していくGKが幅を利かせる現代サッカー界で、むしろゴールライン上に泰然自若として構えるカシージャスの存在感が際立ってもいるだろう。
リオネル・メッシの決して難しくないシュートをファンブルしたデヘア、パンチングに行くべきボールをキャッチしようと飛び出してCKにし、そこからトッテナムに痛恨の決勝点を許したエデルソン。カシージャスならきっと、そんな単純なミスは犯さない。