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不屈の“聖イケル”カシージャス。
急性心筋梗塞も乗り越えられるか。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2019/05/02 17:00
現地時間5月1日の練習で心筋梗塞となり病院に搬送されたカシージャス。無事を祈りたい。
守護神に返り咲き好セーブ連発。
この日、好セーブを披露してクリーンシートを記録(結果はスコアレスドロー)したカシージャス自身も試合後、去就に関しては明言を避けながら、こんなコメントを残している。
「アンフィールドで無失点だったんだ。これがCLとの別れになったとしても、後悔はないよ。そして、あのような美しい拍手を送ってくれたリバプールのファンにも感謝している」
しかし、未来とは分からないものだ。
このリバプール戦と前後して国内リーグでもスタメンに返り咲いたカシージャスは、30節の宿敵ベンフィカとの大一番で1-0の完封勝利に導くビッグセーブを連発するなど、終盤戦の大車輪の働きでポルトの5シーズンぶり28回目の優勝に貢献。その地位を不動のものにするのだ。
“聖イケル”復活とGK像の変容。
そして迎えた今シーズン、晴れてポルト残留を果たしたカシージャスは、“聖イケル”と呼ばれたレアル・マドリー時代のようなハイパフォーマンスで、完全復活を高らかに宣言する。
30節を終えたポルトガル・リーグで2位のポルトは、ここまでわずか17失点。全試合フル出場のカシージャスは、1試合平均0.57点という驚異の失点率を誇り、鉄壁のディフェンスを最後尾から力強く支えている。
マドリー時代に3度のCL制覇と5度のラ・リーガ優勝を経験し、スペイン代表としても2010年の南アフリカW杯優勝とEURO連覇('08年、'12年)を成し遂げた稀代のシュートストッパーも、「大型化」と「リベロ化」が進むGKのプレースタイルの変容に伴い、近年では世界の十傑に数えられることも少なくなった。
190cm超の長身で、フィールドプレーヤー並みの足技を備えたGKが持てはやされる昨今、比較的小柄で、あくまでもゴールエリア内で勝負するカシージャスのようなタイプは、次第に過去の遺物となりつつあるのかもしれない。