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不屈の“聖イケル”カシージャス。
急性心筋梗塞も乗り越えられるか。
 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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posted2019/05/02 17:00

不屈の“聖イケル”カシージャス。急性心筋梗塞も乗り越えられるか。<Number Web> photograph by Getty Images

現地時間5月1日の練習で心筋梗塞となり病院に搬送されたカシージャス。無事を祈りたい。

首脳陣や監督に煙たがられても。

 求道者のようにプレーを突き詰めるカシージャスの愚直さは、ときにクラブ首脳陣や監督に煙たがられる。マドリー時代にはフロレンティーノ・ペレス会長やジョゼ・モウリーニョ監督との確執が表面化し、最後は石もて追われるように、下部組織時代から25年間を過ごしたクラブを去ることになった。

 さらに'15年のポルト移籍後も、前述したようにフロントの思惑に振り回され、起用法を巡ってセルジオ・コンセイソン監督との関係が悪化した時期もあった。

 キャリアの晩年は、波乱万丈とも表現できるだろう。けれど、歳を重ねてGKとしての基本技術が衰えてしまったわけでは決してないし、かつて世界の頂点を極めた矜持をどこかに置き忘れてきたわけでもない。

 カシージャスが敵地アンフィールドで、今度は「憐れみ」を取り除いた混じり気のない敬意の拍手を浴びてから8日後、ポルトは本拠地ドラゴンでリバプールに1-4で屈した。第1レグと合わせて許したゴールは6つで、いずれもカシージャスにとってはほぼノーチャンス。昨シーズンに続いての完敗である。

 それでも試合後のカシージャスの表情が、どこか吹っ切れたように映ったのは気のせいだろうか。切り替えの大切さを熟知するベテラン守護神は、リバプール戦から2日後のサンタ・クララ戦で、今シーズンの国内リーグで18回目となるクリーンシートをマーク(1-0)した。

 ポルトガル・リーグ連覇に照準を絞り、デッドヒートを繰り広げるベンフィカに対してプレッシャーを掛けることに成功(30節終了時点で同勝ち点、得失点差でベンフィカが首位に立つ)している。

とにかく今は治療に専念を。

 個人的な願望を言えば、できればリバプールの壁を乗り越え、CL準決勝でバルサと対峙するカシージャスの姿が見てみたかったが、それは来シーズン以降の楽しみに取っておこう。

──そんな風に思っていた矢先のことだった。

 ポルトガルからショッキングなニュースが飛び込んできた。5月1日、ポルトでのトレーニングセッション中にカシージャスが急性心筋梗塞を起こし、病院に緊急搬送されたというのだ。

 幸い命に別状はなく、ポルト側も「すでに症状は安定し、心臓の問題も解決した」と公式声明を出している。しかし、長年にわたる激闘が、彼の心臓に我々の想像を絶するような負担をかけてきたことは間違いないだろう。

 現地紙によれば、今シーズンの残り試合はもうプレーしないという。ベンフィカとの熾烈な優勝争いの渦中での離脱に、誰よりも悔しい思いをしているのはカシージャス本人だろうが、今はとにかく安静にし、治療に専念してもらいたい。

【次ページ】 それでもカシージャスは前向きで、愚直だ。

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