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メジャーは「サイン盗み」も世界一?
歴史は50年以上、ハイテク化も進行。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2019/04/10 10:30
2017年8月18日のレッドソックスvs.ヤンキース。走者二塁でレッドソックスのデバースがホームランを放った場面に対して「サイン盗み」の疑惑が浮上した。
腕時計型の携帯端末で……。
ここまで触れれば、お分りいただけるだろう。このハイテクシステムが今の「サイン盗み」を高度化させている。
2017年9月に発覚した事件は記憶に新しい。レッドソックスがサインを盗んだとしてヤンキースが機構に証拠映像付きで訴えたものだ。
ビデオ係が解読した相手バッテリーのサインをベンチに入ったトレーナーの腕時計型携帯端末に送信。情報はトレーナー→ベンチ内の選手→走者→打者へと伝達された。携わった選手名も報道される生々しさだった。
この件で悲しいことは「サイン盗み」を問うことでなく、ベンチ内での携帯端末使用の有無にあった。インターネットデバイスをベンチに持ち込むことは禁止されているからである。
「心ある選手」は絶対にいるが。
今も昔も、日米を問わず、レベルにかかわらず、確かに「サイン盗み」は野球の一部かのように存在している。悲しい事実がある一方で、選手全員が「サイン盗み」に依存しているわけではない。
一切に関わらない「心ある選手」はどのレベルの野球にもいる。日本では長嶋茂雄さん、王貞治さんがそうであったことは諸先輩方から聞いた。自身で取材を重ねたイチローさん、松井秀喜さんはもちろん同様だった。この他にも「プライド」高き選手がたくさんいる。
それでもだ。こんな言葉をある監督経験者は残した。
「力のない者が力のある者を倒すためには仕方のないことなんだ」
「サイン盗み」に関わる者は、自らを二流と認め、リスペクトを失う。野球に携わるひとりひとりに考えて欲しいことである。