メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
メジャーは「サイン盗み」も世界一?
歴史は50年以上、ハイテク化も進行。
posted2019/04/10 10:30
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
春の選抜高校野球で「サイン盗み」騒動があったという報道を目にした。
繰り返し行われる行為に日本の野球も相変わらず、と思ったと同時に昨今のメジャーリーグの惨状をあらためて憂えた。
選手各々が持つパワーとスピード、能力の高さはメジャーリーグがナンバーワンであることは誰もが認めるところだが、今のメジャーリーグは「サイン盗み」の技術も世界一になってしまった。嘆かわしい事実だ。
目が開けば直球、閉じればカーブ。
ご存知の方も多いと思うが、メジャーリーグの「サイン盗み」は歴史が古い。
第2次大戦後、中堅の観客席から捕手のサインを望遠鏡で盗み、バッターに伝達する手法が定着した。その後、スコアボードに潜んだ職員がサインを盗み、何らかのシグナルを送り打者に伝える形が生まれた。
有名な話は1970年代のインディアンス。チームロゴである先住民の目が開けば直球、閉じればカーブと言った具合である。
筆者がメジャーリーグを取材し始めたのは、1995年から。その当時は「サイン盗み」は、ほとんどなかったと記憶している。
疑わしき行為があれば、投手はすぐさま故意死球で相手に報復する。長く日本の野球を取材してきた者にとって、「サイン盗み」のない野球は、選手個々の“プライド”を感じさせた。
メジャーリーグはレベルの高さだけではない。崇高な精神が宿る野球がここにはある、と思ったものだった。