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ムバッペにちぎられた昌子源の気骨。
「プライドは、ほぼゼロにしないと」 

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田中滋

田中滋Shigeru Tanaka

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photograph byGetty Images

posted2019/04/09 08:00

ムバッペにちぎられた昌子源の気骨。「プライドは、ほぼゼロにしないと」<Number Web> photograph by Getty Images

ムバッペのスピードに直面した昌子源。その経験ができるからこそ、フランスへと渡った価値がある。

ムバッペは1枚も2枚も上手だった。

 最初のプレーの反省を生かし、次のコンタクトではアタックする意識をうかがわせた。すると前半終了間際にはムバッペへの楔のパスをカット。後半にも、ターンするところを鋭く寄せてボールをつつくなど、時間の経過とともに昌子らしいプレーが見られるようになった。

 しかし、相手は1枚も2枚も上手だった。なかなかゴールが生まれないまま時間が進むとムバッペがギアを上げていく。

 UEFAチャンピオンズリーグのマンチェスター・U戦で見せたように、左サイドにボールが出ると驚異的なスピードでゴール前に飛び込む動きを繰り返す。風のようにCBを振り切る動きに昌子も必死に応戦。ムバッペの動きに合わせてあらかじめポジションを深く取ることでゴール前のパスコースを消していった。

 ところがそれはゴールを奪うための布石だった。74分、右サイドの深い位置からの折り返しに対し、それまでゴール前に突撃を繰り返していたムバッペは敢えて止まる。その場でクロスを受けると、ワントラップしてすばやく右足を振り抜いた。トゥールーズのDFは誰も寄せることができず、ゴールをこじ開けられたのだった。

相手と接点すらつくれない屈辱。

 フランスに渡って以降、昌子はもがき続けている。なにしろここ数シーズン、Jリーグでは1対1で負けたことがほとんどなかった。負けないどころか1人でもボールを奪い取ってしまうほど、1対1の強さは抜きん出ていた。

 しかし、それがフランスではまったく通用しない。接点すらつくらせてもらえず、ムバッペに抜かれ、リヨンのムサ・デンベレにもちぎられていた。

「自分でも迷いはあるんですよ。どうやって対応しようかっていう迷いが、プレー中にすごくある。僕は、最後の最後に体に無理が利くタイプなので、日本ではそこで足を伸ばしてボールを取っていた。でも、こっちは無理が利く体勢で足を伸ばしても届かないところにまで一瞬で持っていかれる。

 日本だったら『あ、やばい抜かれる』というときに最後に足を伸ばしてボールを取れてたから、『おお!』って歓声があがる守備になるんですけど、こっちに来たら『あ、やばい抜かれる』じゃなくて『あ、抜かれた!』なんですよ」

 海外暮らしは1人になる時間が多い。ふとした瞬間にデンベレに抜かれた場面が頭に浮かぶ。どうやって対応したらよかったんだろう。テレビやYouTubeで気を紛らせていたはずなのに、気がつくと頭のなかはあのときの場面に支配されていた。これからはそこにムバッペに抜かれた場面が加わるのだ。尋常ではない悔しさがあった。

【次ページ】 「自分のエゴやプライドは捨てる」

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