プレミアリーグの時間BACK NUMBER
世界が狙う18歳ハドソン・オドイ。
新鋭FWはチェルシーの顔となるか。
posted2019/04/09 10:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Uniphoto Press
「ジョージアのことが頭から離れない」と歌ったのは、今は亡き偉大なアーティストのレイ・チャールズ。一方、「カラムの存在は常に意識の中にある」と語ったのは、就任1年目から解任の噂があるマウリツィオ・サッリだ。
チェルシーの新監督は、カラム・ハドソン・オドイのリーグ戦先発起用を決めるまでに、開幕から8カ月近くを要した。今季プレミアリーグで計119分間の途中出場にとどまっていたユース上がりのウインガーが本格的なチャンスを得たのは、4月3日のブライトン戦(3-0)。前月に初招集を受けたイングランド代表で、先発フル出場を含む110分間を経験した後の出来事だった。
引く手数多の若者に、サポーターも「行かないで」。
今季のプレミアにおいて、ハドソン・オドイほど人々の意識の中にある18歳はいない。今冬、バイエルンは将来性豊かな新戦力と考え、約50億円もの移籍金を提示した。これを受けて本人が移籍を志願すると、サポーターたちは「行かないでくれ」という合唱で思いの強さを伝えた。
イングランド代表のガレス・サウスゲイト監督も、トップチームで通用すると踏んだ1人だ。当初はU-21代表でのデビューが予定されていたが、追加招集された3月22日のEURO2020予選チェコ戦(5-0)でA代表デビュー。相手のオウンゴールを誘発するシュートも見せた。3日後にはモンテネグロ戦(5-1)で先発出場を果たし、1アシストを記録。持ち前のスピードとゴールへの積極性が光った。
この活躍を受けて、国内ではマンチェスター・ユナイテッドとリバプール、国外でもパリ・サンジェルマンとユベントスが興味を示すようになった。『デイリー・ミラー』紙の見出しを拝借すれば、現在、ハドソン・オドイは「欧州で最も引く手数多の若手選手」となっている。
観戦プログラムの表紙を飾ったブライトン戦でのプレーも、注目されるに相応しいものだった。キックオフ前の先発メンバー発表時に起こったファンの歓声は、チーム最大のスターであるエデン・アザールやユース出身の先輩格MFルーベン・ロフタス・チークに勝るとも劣らない大きさで、試合中の出来も両者とMVPを競うレベル。
前半に右サイドから斬り込んで放った弾道の低いクロスでオリビエ・ジルーの先制ゴールを演出し、チームを快勝へのレールに乗せている。