「僕はこんなもんじゃない」

　もともとエリートではない。ガンバ大阪の下部組織で宇佐美貴史に出会い、一度はサッカーから逃げた経験がある。米子北高で名を馳せ意気揚々と乗り込んだ鹿島アントラーズでは興梠慎三と大迫勇也にまったく歯が立たず、Jリーグのピッチに立つようになってからも大久保嘉人や小林悠を相手に散々な目に遭ってきた。

　日本代表でも3年近く出場がない屈辱を味わったが、そこで腐らず上を見続けたことがW杯での活躍につながった。プライドをズタズタにされた経験はこれが初めてではない。プライドをかなぐり捨ててどん底から這い上がれることは最大の強みでもあった。

「自分が納得いくプレーができてないのもわかってるし、これまでもいろんなところで反骨精神を持ってやってきてるんで。とにかく僕はぜんぜんエリートじゃないし、いまでもエリートとは思ってないです。

　W杯に出させてもらって、『Jリーグを代表するDF』と言ってもらえるようになったけど、それも悔しい思いがつねにあったから。鹿島でもキャプテンマークを巻いた試合で（大岩）剛さんにめちゃくちゃ怒られたこともあった。そこから『次は絶対に見返してやる』と思って目線が上がったり、そういう反骨心でやってきた。だから、今回もフランスの人たちに『昌子ってこのレベルなのか』と思われるのがすごく嫌なんです。僕はこんなもんじゃない。絶対に見返してやる」

監督は昌子を高く評価している。

　幸いにしてトゥールーズを率いるアラン・カサノバ監督は、昌子を高く評価している。リヨンに1－5で負けた翌週、トゥールーズの選手たちは気持ちが落ち込み、集中力に欠け、練習にまったく身が入らなかった。

　ところが、昌子はきっちり気持ちを切り替え練習に臨んでいたため、監督は「お前はメンタルが安定しているな」と認めてくれた。

　PSG戦では昌子より安定していた左センターバックのクリストファー・ジュリアンも、なんでも無い場面でミスをしたり、失点に絡むと急にシュンとしてしまう癖があった。初出場以来、大きな波もなく怪我もしないためカサノバ監督は昌子を使い続けている。

「いいチームに来たと思います。こっちに来て失点にめっちゃ絡んでるけど、使ってくれている。もしかしたら人がいないだけなのかもしれないけど、使ってくれるだけでもありがたい」

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