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ムバッペにちぎられた昌子源の気骨。
「プライドは、ほぼゼロにしないと」
text by
田中滋Shigeru Tanaka
photograph byGetty Images
posted2019/04/09 08:00
ムバッペのスピードに直面した昌子源。その経験ができるからこそ、フランスへと渡った価値がある。
「自分のエゴやプライドは捨てる」
しかし、悔しさに支配されても状況は変わらない。目の前の問題に対して、孤独にさいなまれながらひたすら冷静に向き合う。ひたすら論理的な解決策を見出す。そのためには感情やプライドは邪魔でしかなかった。
2016年の天皇杯、準決勝で横浜F・マリノスを下したとき、中澤佑二から「お前、まじでいいよ。がんばれよ」と声をかけられていた。
「誰もが知る中澤佑二さんが、僕のことを認めてくれたのかわからないですけど『がんばれよ』と言ってくれるのはすごくうれしかった」
YouTubeを眺めていたときも、Jリーグ公式チャンネルで中村俊輔が選ぶマイベストチームに自分が入っていることを知った。中村憲剛も、遠藤保仁も自分を選んでくれていた。
「いまフランスでぜんぜんやけど、僕を送り出してくれた(小笠原)満男さんも含めてそういう大御所の人たちは『あいつはやっぱりいい選手だ』と思ってくれてるだろうし、そういうのは捨てたくないですよね。捨てたくないけど、それ以外の自分のエゴやプライドは捨てていかないといけない」
「鹿島のサポーターが僕を……」
これまで築き上げたものは、大きな自信を与えてくれた。だが、そこにすがっていても簡単に抜かれている事実は変わらない。現実は、もっともっと削ぎ落とすものがあることを教えていた。
「こっちでセンターバックをやるには自分が築き上げたDF像を壊してからじゃないとダメなのかもしれない。プライドも捨てないといけない。自分では捨てたと思うんですけど、ほんとはまだどっかにあるんですよ。自分でそういう風に言ってるだけで、まだどっかに日本でやってきたプライドが残ってる。
鹿島のサポーターが『お前はすばらしい選手だ』と思ってくれたことをプライドとしてこっちに持って来たんで、それは捨てたくないし、それで挑んでるんですけど、ほぼゼロにしないとダメなんだなって。鹿島のサポーターが僕を『もうそれ、いつの昌子?』と見て悲しくなるぐらい、『なんか見てられんよ』と思われるぐらいが完璧なリセットかもしれない」