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W杯王者の指揮官デシャン告白。
「頂点に登り詰めたが、人生は続く」 

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レミー・ラコンブ&フランソワ・ベルドネ

レミー・ラコンブ&フランソワ・ベルドネRemy Lacombe et Francois Verdenet

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photograph byRichard Martin

posted2019/03/05 07:00

W杯王者の指揮官デシャン告白。「頂点に登り詰めたが、人生は続く」<Number Web> photograph by Richard Martin

若きエースストライカーは、チームに合流してすぐに攻撃の核となり、成熟したチームプレーを見せた。

「心理学とマネジメントの本を読んでいた」

――監督としてこれからやるべき仕事は何でしょうか?

「ワールドカップ期間中もちょっとした時間があれば心理学とマネジメントの本を読んでいた。タル・ベンシャハルの『人生を選ぶ』という本だ。毎朝起きたときに、『僕は……を知っている』と言う。僕の場合は、自分が何も知らないことを知っている」

――エメ・ジャケが1998年に実践したマネジメントを、あなたも活用しましたか?

「もちろんだ。ただし、彼との間には20年という時間の隔たりがあるのもまた事実だ。状況が違うしフランスで大会が開催されたわけでもない。選手の世代も興味も異なる。

 僕らの時代は今よりずっと世界から隔てられていた。僕らの主要なテーマは『適応』だった。何かを容易にコピーできず、ある特定の時間と場所で起こっていることは、他の場所や時間がたってからでは通用しない。自分自身のパーソナリティーとキャラクター、考え方で合わせていくしかなかった。

 とはいえ基本的な構造や機能の仕方は共通点も多い。だから僕もフランスや他の国での監督経験を生かせるわけだ。重要なのは、繰り返し起こる特定の状況に陥るのを避ける術を身に付けること。すべての解決策を得られるわけではない。だが困難に直面するのを避けるだけですでに悪くはない」

サッカー界の伝説になった感想は?

――マリオ・ザガロ、フランツ・ベッケンバウアーに次いで、選手としても監督としてもワールドカップに優勝しました。サッカー界の伝説になったと思いますか?

「比類なき栄誉だ。しかしだからといって毎朝、鏡に向かって『自分が実現したことを信じられるか!』と語りかけているわけじゃない。誇りには思うが、過去にはさほど拘ってはいない。それよりも今が大事だし、これからどうなるかの方が興味あるからね」

――1958年以来フランスサッカーは、それぞれの絶頂期にレイモン・コパ、ミシェル・プラティニ、ジネディーヌ・ジダンというシンボルが存在しました。しかし2018年のチームにはそんな選手はいません。デシャン世代と表現していいのでしょうか?

「(しばし考えて)それは違う。選手をもっと評価すべきだ。実際にプレーしたのは彼らなのだから。そのことは僕が一番良くわかっている。

 エメ(ジャケ)のときも同様で、彼の業績を何も否定しないし、監督が重要ではないと言いたいわけじゃない。ただ、実際に決めているのは選手たちだということだ」

【次ページ】 このチームは何より“デシャンのチーム”。

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