プレミアリーグの時間BACK NUMBER
驚愕の交代拒否も「ケパの功名」。
サッリのチェルシーが失地回復中。
posted2019/03/05 11:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Uniphoto Press
ケガならぬ、「ケパの功名」。
2月27日のチェルシー対トッテナム(2-0)を、駄洒落の好きな国内タブロイド紙風に表現すれば、そうなるだろうか。
今季からチェルシーでプレーするGKケパ・アリサバラガが、リーグカップ決勝で前代未聞の交代拒否騒動を起こしたのは、トッテナム戦の3日前だ。
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延長戦も後半終了間近、医療チームが駆けつけて診た足の状態は問題なかった。しかし第4審判がウィリー・カバジェロとの交代ボードを掲げ、場内アナウンスまで流れたのにピッチを出ようとしなかったケパは、最終的にヒーローになれなかった。
PK戦で敗れた相手は、2週間前のリーグ戦で6失点を許したマンチェスター・シティ。リーグカップの6日前にはマンチェスター・ユナイテッドに敗れてFAカップ敗退も決まった。チェルシーはCL出場権が懸かるリーグでのトップ4争いでは6位に後退し、カップ選手権でのタイトル獲得にも失敗。
さらに8万人を超す観衆が見守るウェンブリーで、24歳の新戦力が監督の采配を無視する醜態を晒し、モラルも地に堕ちたと言われた。
しかし、ケパをスタメンから外したチェルシーは、ロンドン・ダービーでの上位対決となったトッテナム戦で勝ち点3を手に入れた。しかも、チームとしての秩序と自信を取り戻したのだ。
不当に強いサッリへの風当たり。
マウリツィオ・サッリは、監督としての威厳とメディアの評価も取り戻した。
トッテナム戦前、サッリの評価は過去最低レベルに下落していた。マンCに大敗した直後には「プランB」を持とうとしない姿勢が「職務怠慢」とまで非難された。前方へ素早くパスを繋ぐ攻撃に徹するサッリ流のサッカーこと“サッリボール”は、マンU戦で自軍サポーターから「サッリボールなんて糞食らえ!」との合唱で否定された。
そんな指揮官は、リーグカップ決勝後の会見でケパの行動を「医療スタッフからの報告の遅れによる誤解」と咎めなかった。それを受けて選手の前に屈した情けない監督とまで言われた。解任危機報道は、当然の結末というトーンを強めていった。
サッリへの風当たりは不当に強いと思えた。筆者は、ウェンブリーの会見場でサッリの発言に頷いた少数派の1人である。選手の謀反と監督の権威失墜という論陣を張る記者陣への答えは、本人が言っていたように「チームパフォーマンスを見ればわかる」と思えたからだ。