フランス・フットボール通信BACK NUMBER
W杯王者の指揮官デシャン告白。
「頂点に登り詰めたが、人生は続く」
posted2019/03/05 07:00
text by
レミー・ラコンブ&フランソワ・ベルドネRemy Lacombe et Francois Verdenet
photograph by
Richard Martin
フランスの20年ぶり2度目の世界制覇は、デシャン自身にとってもキャプテンとしての栄冠に続く監督としての偉業達成でもあった。そのデシャンが、世界チャンピオン獲得までの道のりとその後について語った。同誌(1月8日発売号)に掲載されたロングインタビューの抜粋をここに紹介する。
監修:田村修一
「僕の人生はとても素晴らしいと思う」
――7月15日にあなたは代表監督としてキャリアの頂点に達しました。栄光に包まれたまま代表監督を終えるという考えは浮かびませんでしたか?
「まったく思いもしなかった。僕にはまだ情熱があるし、続けたいという意志も野心もある。それらがなくなったら引退も考えないでもないが、その日が来るのはまだまだ先のことだ」
――しかしフランス代表で、これ以上の高みに到達することはあり得ません。
「それでもまだやるべきことはあると確信している。たしかに僕らは世界の頂点に登り詰めたが、人生は続いていく。
僕は50歳になったが、まだ引退する歳じゃない。調子も悪くないし、自分のやるべきことを思う存分にできて満足している」
――決勝の後であなたは選手たちに、優勝した後の人生はそれまでとは違うものになると言いました。あなた自身も違う人生が始まりましたか?
「優勝したからといって人間としては何も変わらないが、周囲の見る目が違ってくると言いたかったんだ。例えばユーゴ・ロリスは、世界チャンピオンチームのキャプテンになった。それが彼に貼られたレッテルだ。僕も選手のときに同じ経験をした。
僕は選手の時代とその後の人生の両方で栄誉に浴することができた。後者の方が長く続くが不確かでもある。だが僕の場合は、後者もすでに豊かだ。
ただ、すぐに第三の人生に足を踏み入れようとは思わない。選手やスタッフとともに、今の道をさらに突き進んでいくだけだ。
僕の人生はとても素晴らしいと思う。子供やファンから写真を求められるのはひとつの特権だ。トマトを投げつけられるよりずっといいだろう(笑)」