松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
修造が訊く!パラ・パワーリフター
大堂秀樹が競技を始めた意外な理由。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2019/03/05 17:00
パラ・パワーリフター大堂秀樹の強靭な肉体は、強靭な精神からもたらされたものである。
「30代でも40代でも強くなれる」
松岡「彼の指導で何が変わったんですか」
大堂「どこの筋肉を使って、それがどう動いているか、より鮮明にイメージするようになりました。そのおかげで、今は試合中も、競技に集中する自分と、それを外から冷静に見ている自分が2人いる。自分がどんな状態かわかっていないと、失敗しても修正できないですから」
松岡「練習量も増えましたか」
大堂「それが逆で、むしろ減ったかもしれません。今までは週3回の練習をいつも試合と同じようなイメージで思い切りやっていたんですけど、今はきっちりその3回が『練習』なんです。ケガなく、安全に、でもしっかりと体を使い切る。
今までは、練習後の疲れは『疲労』だなと単純に考えていたのが、実際は『疲弊』だったことに気づきました」
吉田「大堂君のように、こうやって自分で気づいて変われると良いんですけど、パワーリフティングの選手はこれまでずっと個々で練習を積み上げてきているので、変えようと思っても変えられない人が多い。やり方次第でもっと強くなれるんですけど」
松岡「それもこの競技の魅力なんですね。トレーニングに工夫を凝らせば30代でも40代でも強くなれる。努力が必ず結果としてでてくる」
大堂「障害者も健常者も関係なく、誰が一番強いのか。誰が一番重たいものを上げられるのか。地域差もないし、貧富の差もありません。ベンチ台が1台あれば誰でもできる。僕はこの競技は、究極のバリアフリーだと思います」
“究極のバリアフリー”。この連載でも、パラカヌーの瀬立モニカさんが以前、同じようなことを話していた。「水上は、私にとっては“究極のバリアフリー”なんです」――。
ハンディをものともせず、競技の場はむしろ、オールイコールのコンディション。そこで争い、自己記録を更新し続け、頂点を目指すことこそに、スポーツ本来の楽しみ、喜びがある、ということなのだろう。
(第3回に続く……/構成 小堀隆司)