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辻監督に指名されて「はぁ……」も、
秋山翔吾は自分なりの主将像を築く。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2019/02/10 11:30
名実ともにチームリーダーとなった秋山翔吾(右)。日本代表の稲葉篤紀監督と笑顔で談笑する場面も。
引き受ける側としての覚悟。
秋山が常日頃からチームのことを考え、若い選手を練習に誘ったり、会話をする機会を増やしているのは周知の事実である。「チームのことを考えているから自分が成績を残せないのは恥ずかしい」と口癖のように語り、その行動で示してきた。発表を聞いたとき、おそらく誰もが「秋山ほどキャプテンにふさわしい選手はいない」と感じたことだろう。
昨シーズンも、自身が不振に陥った8月を乗り越え、終わってみれば3割2分3厘の打率と、5割以上の出塁率を残している。だからこそ今、キャプテンマークをつけることにどんな意味があるのか。自分に何が求められているのか。「引き受ける」側にも覚悟の必要な決断だった。
「もし言い訳をさせてもらえるのなら『キャプテンをやったので打率が1割でした』と言えるけど、絶対にそんな言い訳が通用する世界ではないし、それじゃ自分がいちばん納得できないと思います。これまでもチームを引っ張る立場でプレーしてきたつもりですけど、何かの際にキャプテンということで表に立つ機会が増える。
そういう意味では、今まで以上にしっかりした成績や姿勢を見せないといけないとは思っています。そうじゃなきゃ若い選手に話をするときに説得力がないし、チームにもいい影響を与えられないですからね」
そして、こう続けた。
「自分に結果が出なかったときに、キャプテンという立場の重みを感じるかもしれません。キャプテンという役割で1年通じて、周囲も自分も納得できる数字を残せたら、自分自身の成長になるし、糧ともなると思います」
'18年後半戦に話していたこと。
振り返ってみると2018年シーズンは開幕から首位を守り切り、リーグ優勝を果たしたライオンズだったが、ソフトバンクの猛烈な追い上げにあっていた8月、秋山はやはりチームのことを考えていた。
秋山を含め、優勝経験のある選手が少ないチームにあって、「勝つために必要な経験」が何なのか。当時、秋山はこんなことを話していた。
「開幕から独走して、打線も好調で、連勝もして、このいい雰囲気で万が一、優勝できなかったら、おそらく選手はみんな迷うと思うんです。『じゃあ、この先、どうしたら優勝できるんだ?』と。だからこそ今シーズンは絶対に優勝しなければいけない。今年の戦いが今後のライオンズを決めるくらい、僕は大切なシーズンだと思っています」