サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
森保Jはセットプレーを強みにする。
選手も実感する戦略の緻密さとは。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/01/24 13:45
セットプレーで先制点が獲れれば、展開は一気に変わる。日本が世界で戦うための大切な手段である。
PA内に入り込むのは5人だが。
以前のサウジアラビアはCKの守備の時、各選手がエリアを担当するゾーンディフェンスが基本だった。その上で、空中戦の強い選手にだけはマンツーマンでマークについていた。
しかし、グループステージのカタール戦でCKから失点するなど、不安定な守りを露呈していた。だから日本戦では守り方を変更して、マンツーマンを基調とするようになった。その変化について冨安はこう語っている。
「今までのゾーンプラスマンツーでやっていたところから、マンツーでやってきて、ギャップが生まれたと思います。マンツーマンにしても、ちょっとマークが緩いと思っていたので、上手くマークを外すことができたというか。あとは(柴崎)岳くんが練習から本当に良いボールを蹴ってくれているので、そこに合わせるだけでした」
セットプレーに変化を加えていたのは、サウジアラビアだけではなかった。日本もまた、味方CKの時にゴール前に入っていく選手を変えていたのだ。
CKの際、ペナルティーエリア内には基本的に5人の選手が入っていく。今大会の初戦からセンターフォワード、センターバックの2人、背が高い方のボランチ。この4人は変わらない。
ただ、残る1人は流動的だ。先発の選手で言えば、初戦はフィールドプレーヤーのなかで3番目に背の高い酒井宏樹だったが、2戦目は南野拓実か堂安律のいずれかでショートコーナーをもらいに行かない方、3戦目は北川航也だった。
4戦目となるサウジアラビア戦は酒井だったが、1-0で折り返した後半からは相手のカウンターに備えるために、酒井の代わりに南野か堂安が入ることになった。
NBAの動きを参考にした戦術も。
相手の分析を徹底的にしたうえで、自分たちのやり方も変えていく。その緻密さの価値を語るのが、吉田麻也である。
昨年のロシアW杯で、ベスト4に進んだイングランド代表が12得点のうち9得点をセットプレーから挙げた。その割合だけではなく、CKからの得点を増やすためにバスケットボールのNBAの動きを参考にしていたことが話題になった。
プレミアリーグのサウサンプトンでプレーする吉田は、こう話している。
「いわゆる『フットボールIT』的なところはどんどん進んでいて、サウサンプトンも、分析で(スタッフを)10人以上雇っています。分析は本当に大事なんじゃないかなと思います。
そして、日本人スタッフは緻密だなと思いますね。ロシアW杯のときもそうでしたが、スカウティングは(試合や対戦相手の分析に)使っているフォーマットもイングランドと同じものですから」