サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
森保Jはセットプレーを強みにする。
選手も実感する戦略の緻密さとは。
posted2019/01/24 13:45
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Takuya Sugiyama
「戦局を左右するのは、戦術ではなく戦略だ」
登場人物がこんな言葉を口にするアニメがあった。現実にも「バスケットボールの世界にもあてはまる」と語るプロバスケ選手がいる。
そして賛否両論が渦巻くアジアカップの日本代表の戦いぶりも、この表現がしっくりくるのかもしれない。
決勝トーナメント初戦のサウジアラビア戦、日本が記録したボール支配率はわずか23.7%だった。
2002年日韓W杯以降で見れば、ロシアW杯最終予選のオーストラリア戦で記録した34%を大幅に下回るものとなった。相手に許した枠内シュートは1本だけだったので、サウジアラビアに多くのチャンスを作られたわけではなかったのだが……。
問題となったのはボールを奪ってからの展開だ。守備時に全体の位置が低すぎて、攻撃に出ようにもゴールまでの距離があまりに遠く、選手同士の距離も遠い。短い距離でのパス交換も実現しなかった。
さらに大迫勇也の負傷欠場もあり、奪ったあとにボールを収めて、攻撃の起点を作る場面も少なかった。
「あぁ、ゾーンではない」
実は9月に森保監督のもとでの活動がスタートしてから、練習ではアタッキングサードで複数の選手が連動して崩すメニューに多くの時間が費やされてきた。
つまり、カウンターの方法についてはチームで共有されてたとは言いがたい。また今大会では初戦のトルクメニスタン戦では相手の5バックに手こずってもいる。
森保監督が戦術面でもたらすものは少ないのでは。そんな批判がくすぶっている。
しかし、日本に攻め手が何もなかったのかというと、そうでもない。
サウジ戦、コーナーキック(CK)から冨安健洋が頭で決めたゴールを守りきり、1-0で日本は勝利をつかんだ。
冨安が決めたのは、最初のCKだった。20歳と77日、Jリーグ発足以後だと香川真司に次いで2番目、DFとしては内田篤人を抜く最年少ゴールを決めた冨安は、こんな風に感じていた。
「パッとみて、『あぁ、ゾーンではないな』と感じました」