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ベトナム代表を熟知するトルシエが、
森保Jに伝えたい「危険さ」とは。 

text by

田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2019/01/24 13:00

ベトナム代表を熟知するトルシエが、森保Jに伝えたい「危険さ」とは。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ここまでの戦いで森保ジャパンは急激に成熟の度を増してきた。優勝まで……あと3勝だ。

「難しい試合を良く戦ったと思う」

――その通りだったと思います。

「繰り返すが……日本はコレクティブな力で相手を無力化した。そのうえ日本は(サウジにとって)危険の部分も兼ね備えていた。

 武藤はずっとカウンターの機会を狙っていたし、遠藤と柴崎はチームのバランスをよくとっていた。堂安と原口は守備で多大な貢献をした。

 難しい試合を良く戦ったと思う。選手は冷静にプレーを続け、監督はチームに最善のバランスを見いだした」

――押し込まれてはいたが、勝利は順当であったと言えますか?

「日本は勝利に値したし、若いチームがしっかりと存在感を示した。

 ただ、このチームは、問題をコレクティブにしか解決できない。試合の流れに1人で違いを作り出せる選手がいないからだ。

 しかし……さし当たってはそれで十分なのだろう。コレクティブな力ですべての問題を解決し、個の力で違いを作り出せる偉大な選手を必要とはしていない。

 日本の力とはコレクティブな力であり、連帯やチーム一丸の力だ。若く自信に溢れてはいても、常にひとつになってプレーすることが求められている。個の能力が突出した個人主義者は日本にはいない」

――日本のカウンターアタックがあまり効果的ではなかったのもそれが理由でしょうか?

「パスを繋ぐ意識が強すぎて、個人で状況を切り開く判断がなされていない。

 普通カウンターはできるだけパスを簡略化して仕掛けるが、日本はそうするにはコレクティブであり過ぎた――。

 そのうえ個人として違いを作り出せる選手を決定的に欠いていた。連係を求めて常にパートナーを探しているようだが、肝心な時にそういう選手を見いだせなかった、ということだ。

 それが今の日本の問題であり弱点だ。

 個の強さ、個のパフォーマンスを欠いている。日本の長所はコレクティブな強さだが、弱点もコレクティブにしか戦えないことだ」

【次ページ】 「カウンターが仕掛けられれば……」

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