ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
同じ失敗をする代表にオシムが一言。
「もっと過去の失敗から学ばねば」
posted2019/01/21 13:45
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Imaginechina/AFLO
日本対ウズベキスタン戦のおこなわれた日、イビチャ・オシムはオーストリアのグラーツにいた。数日前に雪のサラエボから同じく雪のグラーツに移動したのは、創立110周年を迎えるシュトルム・グラーツの記念式典に出席するため。シュトルムとしても、クラブ史上最大の功労者であるオシム抜きに式典をおこなうわけにはいかなかった。
ウズベキスタン戦のキックオフは、ヨーロッパ時間で午後3時半。自宅で見終えた後、式典に出て帰宅したのは深夜1時過ぎだった。同伴したアシマ夫人によれば、忘れられない素晴らしい夜であったという。
翌日、オシムに電話で話を聞いた。
「勝利がすでにルーティーンに」
――元気ですか?
「君らも場所を移動したのか?」
――今はドバイにいます。
「それはよかった。君自身もツーリストになれる。仕事と旅を両立できるのは素晴らしいことだ」
――日本にとってもよかったです。
「それはまた話が別だ。日本にとってはルーティーンになった」
――ルーティーンですか?
「試合に勝つことがだ。日本のような勝ち方をするのは、勝利がすでにルーティーンになっている証でもある。日本の力でもあり、他の国々は日本に対してコンプレックスを抱いている。だからこそ常に優勝候補であることに意味がある。
あなた方は今や倒すべき対象だ。そうなると戦いはより難しくなる。どこも日本に対して本気で挑んでくる。日本に勝てば、それはひとつの出来事として評価されるからだ。それだけのカリスマ性を日本が得たのは凄いことでもある。
優勝候補と常に位置づけられながら、勝利を求められ続けるのは簡単なことではない。その点を意識すべきだし、優勝候補であることにどう対処していくかは考えねばならない。
とはいえアウトサイダーであるよりはずっといい。
以前の日本はアウトサイダーだったが今は違う。本命の地位を確立し、それに相応しい振る舞いを求められている。
ボールを良くキープしてよく走る。やり続けるのは簡単ではないし、本命であり続けるのも難しい。しかしその役割こそ全うすべきものだ。簡単ではないのだから尚更だ」
――その通りです。