プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人異例の契約保留者が示した、
戦力補強よりも大切なこと。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/12/08 17:00
今季は29試合に登板し、2勝1ホールドの田原。2011年ドラフト7位で入団した29歳。
宮本、水野ら新コーチ陣に期待!
4年連続で優勝を逃している巨人の大きな弱点がこの中継ぎ陣の数字の悪さにあったことは明白だった。巨大補強の陰で、その一番の懸案は全く解消されないままに、今オフの編成は進んできてしまっていたように見えるのである。
ただ、そういう中継ぎ投手の環境改善という点では、戦力補強ではない希望はある。
それは新しいスタッフだ。
新たに就任した宮本和知、水野雄仁両投手コーチは、中継ぎ登板の難しさを知る、という点ではうってつけのコーチと言えるだろう。2人とも現役時代から中継ぎ、抑え、左のワンポイントと様々なシチュエーションでのリリーフ登板を経験して、先発投手が知り得ないその難しさも熟知している。何より2人ともコミュニケーション能力が非常に高いことは、風通しの悪かったブルペンの再生に大きな武器となるはずである。
「コミュニケーションが取れると思った。自分も言いやすい部分もあったし、若い選手も言ったりした部分もあった。来年は良くなると言う風に感じました」
新体制で迎えた秋季キャンプのブルペンの雰囲気を田原はこう語っている。
補強の次は、監督、コーチの仕事に。
チームの弱点を補うために補強を行うのは、編成部門の責務だ。ただ、力を出しきるための障害を取り除き、伸びしろのある素材をきちっと使いこなすことは、今度は現場を預かる監督、コーチの責任である。
もちろん丸や中島やビヤヌエバで打線のテコ入れをし、岩隈や炭谷獲得による先発バッテリーを強化するのも大切かもしれない。ただ、この中継ぎ問題をどう解決するのかこそ、実は巨人が5年ぶりのセ・リーグ王者となるためには必要条件だった。
ブルペンを再生して勝てる試合を確実に勝ち、負けている試合をいくつ白星に逆転できるか。
そこからしかペナント奪回への道は始まらないということだ。