プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人異例の契約保留者が示した、
戦力補強よりも大切なこと。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/12/08 17:00
今季は29試合に登板し、2勝1ホールドの田原。2011年ドラフト7位で入団した29歳。
目立った、救援陣の防御率の低さ。
端的に数字に表れているのは、やはりチームのホールド数だった。
セ・リーグのホールド数トップは136のDeNAで2番目がヤクルト(100)、以下広島(98)、阪神(96)、中日(82)と続いて巨人は73ホールドと圧倒的に少ない。
もちろんこの数字の裏にはチーム完投が21という桁外れの数字があるのだが、そればかりとは言えないのは救援陣の防御率の低さにも表れている。
個々の選手で見ても、防御率3点以内で終わったのは宮國(1.97)と田原(2.56)の2人だけ。3点台に上原(3.63)とアダメス(3.94)がいるが、その他の中継ぎ陣では池田(4.07)、澤村(4.64)、野上(4.79)、中川(5.02)、谷岡(5.76)と、特に追いかける展開でマウンドに上るケースの多かった投手は軒並み5点前後の数字に落ちてしまっていた。
つまり、勝ち試合をそのまま逃げきれない。
中盤で競り合った試合もあっさり勝ち越され、1、2点を追いかける展開ではダメ押し点を奪われてしまう。そこに大きな敗因があるということだ。
どんどん悪化していた救援防御率。
ただ、そうした数字の背景は選手だけの責任ではない、と田原は説明する。
「そろそろ自分かな」と思って投球練習の準備を始めると、投手コーチから「お前はまだいい」と制止されたが、直後に「やっぱりここから行ってくれ」と送り出されたケースもあった。
また、全く肩ができていないのに、急に登板の指名を受けたケースもあったとも語っている。
田原曰く、この環境の悪化は昨シーズンより今シーズンはさらに酷くなり、救援防御率も昨年の3.40から4.12と下がっている。
「僕らにしても若い選手らにしても、やりにくい環境で結果を出すのは難しい。少しでもいい環境でやってチームの底上げにつながれば、日本一は絶対に取れるものだと思う。今回の保留が環境改善のきっかけにつながれば」
田原の訴えだった。