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緻密な戦術とゲルマン魂を併せ持つ
ホッフェンハイムと31歳監督の頭脳。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byGetty Images

posted2018/11/26 08:00

緻密な戦術とゲルマン魂を併せ持つホッフェンハイムと31歳監督の頭脳。<Number Web> photograph by Getty Images

いわゆる「ラップトップ」監督の象徴であるナーゲルスマン。彼のキャリアは今後どうなっていくか。

シュート数と走行距離トップ。

 このプレーは最初のパスの受け手の近い距離に、複数の選手がいることで可能になる。今季最多33ゴール(1試合平均3ゴール)を記録している、ルシアン・ファブレ監督率いるドルトムントでもよく見られる爆発的な攻撃だ。

 そうした攻撃をオートマティックに繰り出すために、ナーゲルスマン監督は練習から意識づけをしている。ピッチの横幅を極端に狭くしたゲーム形式のメニューを行なうことがある。

「僕は、各選手が相手ゴールに背を向けたときに心地よいと感じるのか、相手ゴールに顔を向けたときに心地よいと感じるのかを観察している。そして、起用を決めるんだ」

 練習場には縦が3m、横が6mもある大型ビジョンが設置されている。練習の合間にチームの動き、対戦するチームの特徴を確認したりしながら、練習に臨めるのだ。そして試合直後には、良かった点や改善点を示した映像が選手には届けられるという。

 そんな取り組みの結果、流れの中からのシュート数、走行距離、これらすべてのデータがブンデスリーガでトップを記録している。

積極的すぎるゆえのミス。

 ただフルスロットルの攻撃を求めるゆえに、試合中エアポケットにはまりこんだかのように集中力が切れ、信じられないようなミスが出てしまう。

 CLでは第2節から4節まで、すべてミス絡みからの“もったいない”失点を重ねてきた。3-3に終わったホームでの第3節リヨン戦後、ナーゲルスマン監督はこう話している。

「僕らがサッカーで提示したものは素晴らしいものだった。さらに1、2点入ってもおかしくはなかったが、3得点というのは普通に考えて妥当なところだ。ただし、勝ち点1という結果は、僕らが見せたサッカーと比較すると、あきらかに物足りない。苦労は報われなかった。あまりに簡単に失点しすぎたよね。そして残念ながら僕らにとって、それはよくあることと言わざるをえない」

 思い出されるのはユルゲン・クロップのケースだ。彼がドルトムントの監督時代に初めてCLを戦った2011-12シーズンでは、アグレッシブさを強く求め過ぎたことでグループ最下位に終わった。その反省を受け、翌シーズンは攻守のバランスを整える慎重な戦い方に舵を切って、CL決勝まで上り詰めた。

 ただ、忘れてはならないのは、つまらないミスから失点を重ねてビハインドを負ったとしても、そこから守備を固めてくる相手のゴールをこじ開けているということだ。

【次ページ】 手堅さよりも得点を獲れ。

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