ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
緻密な戦術とゲルマン魂を併せ持つ
ホッフェンハイムと31歳監督の頭脳。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2018/11/26 08:00
いわゆる「ラップトップ」監督の象徴であるナーゲルスマン。彼のキャリアは今後どうなっていくか。
手堅さよりも得点を獲れ。
51分に退場者を出したアウェーでの第4節リヨン戦では、CLで初めて数的不利の状態から2ゴールのビハインドを跳ね返すチームとなった。
実はドイツ語には「ゲルマン魂」なる言葉は存在しないのだが、近年のドイツ代表から失われ(ヨアヒム・レーブ監督自身もロシアW杯の敗因の1つに挙げている)、伝統的な武器としてきた不屈の精神を、精密にデザインされた攻撃を武器に思い出させるのは、なんとも興味深い。
2016年の2月11日、ナーゲルスマンがブンデスリーガ史上最年少となる28歳でトップチームを任されたとき、ホッフェンハイムは下から2番目となる17位に沈み、残留まで勝ち点7差の状況だった。
手堅く勝ち点を積み重ねていかないといけない。
周囲がそう語るなかで、彼が残したメッセージは今でも語り草だ。
「残留するためには、点を獲って、試合に勝たないといけない」
当初はナーゲルスマンのそうしたアグレッシブ方針に懐疑的だった識者たちも、その手腕を認めざるをえなくなった。
ペップのバルサ時代が理想。
バイエルン監督時代に3冠を達成した好々爺ユップ・ハインケスは、こう語っている。
「ナーゲルスマンには明確なマッチプランがある。そして、グラウンダーのパスを使うことや攻守の素早い切り替えなどの目に見えるようなプレーのアイデアもある。監督としての素晴らしい才能を持っているということだね」
ナーゲルスマンの理想は、ジョゼップ・グアルディオラ(ペップ)がバルセロナ時代に見せていたサッカーであり、ペップがイングランドに渡った後にも連絡を取っているという。彼は偉大な先輩たちとの話を引き合いに出し、こう語る。
「僕は多くのトップクラスの監督と話をしてきたけど、みんなが口をそろえていたんだ。自分の選手とともにハードワークをすることを決してやめてはいけないよ、と。トップクラブの選手と、うちの選手との間には差がある。同じようにバイエルンやマンチェスター・Cのようなクラブとホッフェンハイムの監督の間にも差がある。それは当然のこと。つまり、努力しないといけないということだ」