欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
長谷部誠の茶髪時代を覚えてる?
失点0にこだわり続ける職人の今。
posted2018/11/24 11:00
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph by
AFLO
最後の番人として、門に鍵を掛ける――。
アイントラハト・フランクフルトの最後尾に鎮座する長谷部誠。リベロのポジションで試合を操るその姿は、今では完全にチームの顔となっている。かつて日本代表でプレーした頃のように、現在のフランクフルトでも腕章を巻いているわけではない。主将を務めるのは3バックでコンビを組むダビド・アブラアムだ。しかし、長谷部は肩書きに左右されることなく、このチームでキャプテンシーを発揮し続けている。
まるで10年以上も門番を務めてきたかのような佇まいで、最後尾から冷静にゲームの流れを読む。たとえリードを広げていたとしても、仲間内に緩みが生じれば、強い言葉を発して引き締めを図る。
試合中のふとしたタイミングで、同じく3バックでコンビを組むエヴァン・ヌディカを掴まえては、身振り手振りを交えて“教育”する。
今季から新加入の19歳のこのフランス人CBは、長谷部の薫陶を受けて急成長を遂げているのだ。
今の長谷部は失点0にこだわる。
11月11日、秋の澄み渡った夜に光り輝くコメルツバンク・アレナ――。
代表ウィークに入る直前に行われたFCシャルケ04戦でも、長谷部は手慣れた様子で試合に入り、門番として粛々と仕事をこなしていった。
攻撃時には最後尾から丁寧にボールを配給。力強いインサイドキックは、その1つひとつがチームに力を注入するかのようである。守備時には、的確なポジショニングで、敵のセンターFWギド・ブルクシュタラーへのボールをインターセプト。
このところ毎試合のように繰り返されるボール奪取は、熟練した職人が淡々と繰り出す技そのものだ。GKラルフ・フェールマンから前線のブレール・エンボロを目掛けたリスタートにも素早く反応し、カウンターの芽も摘む最後の番人である。
こうして長谷部が後ろから統率するフランクフルトは、前半こそシャルケの3バックを崩せなかったが、後半に入って時間が進むと攻撃陣が爆発することとなった。
ルカ・ヨビッチ、セバスチャン・アレが持ち前の破壊力を見せつけ、一挙に3点を奪う。
結局、守備陣は失点を0でシャットアウト。3-0のスコアでの快勝に、長谷部は手応えを得たようだ。