ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
緻密な戦術とゲルマン魂を併せ持つ
ホッフェンハイムと31歳監督の頭脳。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2018/11/26 08:00
いわゆる「ラップトップ」監督の象徴であるナーゲルスマン。彼のキャリアは今後どうなっていくか。
ハーフスペースの有効活用。
ホッフェンハイムの攻撃の核となっている1人が、アンドレイ・クラマリッチだ。ピッチを縦に5分割した際、中央と左右両サイドの間にある「ハーフスペース」を巧みに使うクロアチア人アタッカーが、左FWや左シャドーで起用される。
ハーフスペースにいて、しかも相手のDFラインと中盤の間をとってボールが入れば、相手の守備が揃っていても攻撃の起点が生まれる。
クラマリッチがゴールを見た状態でボールを右サイドに振り、ダイレクトで折り返す。するとDFは2度身体の向きを変えて、ホッフェンハイムの選手をマークしなくてはいけなくなる。このタイミングで生まれるのだ。
例えば、右ウイングバックのパベル・カデラベクがクロスから味方のシュートにつなげる確率は47.5%で、ブンデスリーガでトップの数字だ(データはすべて第11節終了時点)。
左アウトサイドのレーンを高速で駆け上がるくニコ・シュルツにも、クラマリッチは適切なタイミングでパスを出し、シュルツは狙いすましてダイレクトでクロスを送る。シュルツの90分平均クロス数の6.73本はブンデスリーガ最多。その活躍が認められ、9月のペルー戦では念願のドイツ代表デビューも果たした。
数的優位を徹底する。
もし相手がクラマリッチからの展開をケアしてくれば、自らが直接シュートを狙う。それもあってクラマリッチの90分平均のシュート数は4.13本をマーク。ティモ・ベルナー(ライプツィヒ)に次いで、ブンデスリーガの全選手のなかで2位だ。チームのペナルティエリア外からのシュート数も、リーグトップを記録している。
ホッフェンハイムのもう1つの特長が、片方のエリアに人を密集させて、数的優位を作って仕掛けるダイナミックな攻撃だ。そのサイドからゴールを目指す、あるいは相手が数的不利を防ごうと寄ってきたところで、大きな展開を1ついれて、逆サイドからフィニッシュを狙う。
その攻撃は1本の縦パスがスイッチとなる。パスに対して、1人目のレシーバーがフリック(方向を変える)、スルー(またぐ)、壁パスなどで反応する。これで相手守備陣よりもスピードと人数で上回り、少し低い位置から3人目の選手(2人目のレシーバー)がスピードに乗ってボールを受け、勢いをもってゴールへ向かう。
こうなると、相手の守備は手遅れだ。