ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
終盤突き放す川崎、逃げ切れぬ広島、
そして鹿島が見せた「勝者の作法」。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byAFLO
posted2018/11/10 10:30
したたかに時間を使って試合を締める。“鹿島る”なんて言われ方もするが、鈴木優磨も気づけばその作法を手中にした。
「オーレ!」という選択肢。
ちなみにロシア・ワールドカップの決勝トーナメント以降の16試合で、逆転負けを喫したのは日本とイングランドのみ。同点に追いつかれ、PK戦の末に敗れたのもスペインとデンマークだけだった。
いかに勝ちゲームを締めくくるか。そこには引きこもりとイケイケ以外に、もう1つの選択肢がある。
ボールキープだ。
肝心のボールがなければ、相手は反撃しようがない。ひたすらボールをキープし、時計の針を進め、試合を終わらせてしまう。
「オーレ! オーレ!」
スタンドから、そんな歓声が聞こえてきたら、クローズの合図だ。点を奪う以上に失点を避けるためのボールポゼッション。とくにラテン諸国の常套手段と言ってもいい。
受け身にも前のめりにもならず。
どういうわけか、日本ではこの「3つ目のセオリー」を選択するチームが、とても少ない。
手堅く守って逆襲を狙うカウンター志向の強いチームはともかく、ポゼッション志向の強いチームでも、気がつくと、反撃に転じた敵の勢いに呑み込まれ、ずるずると自陣に後退――というケースが多々ある。
こうした悪循環と無縁なのが川崎というわけだが、先週末に2点差の「利」を十全に生かして試合を終わらせる百戦錬磨の一団がもう一つあった。
鹿島だ。
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝第1戦。イラン随一の強豪ペルセポリスをホームで破り、アジア王座に大きく近づいた。その最終スコアが、2-0だった。
2点差がついてから、受け身にも前のめりにもならないのが海千山千の鹿島らしい。とことん相手の嫌がることをやり続け、したたかに勝利をたぐり寄せた。