ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
終盤突き放す川崎、逃げ切れぬ広島、
そして鹿島が見せた「勝者の作法」。
posted2018/11/10 10:30
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
AFLO
リードを奪って、残り〇分――。そこから先の振る舞い方が「天国と地獄」の分かれ目だった。J1の覇権争いだ。
先週末に開催された31節、首位の川崎と2位の広島はいずれも2-0までスコアを動かし、勝利を目前にしていた。だが、結末は実に対照的なものだった。
川崎:〇3-0(対柏)
広島:●2-3(対磐田)
こうして両軍の勝ち点差は「7」まで広がり、川崎が連覇に王手をかけることになった。2点差をフイにした広島にとって悔やみきれない痛恨事。守勢に回り、前のめりになった磐田の圧力に押しつぶされた。
ドーハの悲劇以来の課題。
逃げ切るべきか。
突き放すべきか。
一方がリードを奪い、後半の半ばを過ぎると、どういうわけか、この二者択一に走りやすい。守りを固めるか、それとも攻めの手を強めるか。引きこもりとイケイケの両極へ針が大きく振れてしまう。
1993年、アメリカ・ワールドカップアジア最終予選最終戦。1点をリードしながら、土壇場でイラクに追いつかれ、本大会への夢が絶たれた『ドーハの悲劇』以来、ゲームの締めくくり方は大きな課題となってきた。
2006年ドイツ・ワールドカップ初戦でも先制しながら終盤にオーストラリアの反撃を食らって1-3の逆転負け。さらに記憶に新しいのが今夏のロシア・ワールドカップにおけるベルギー戦だ。2点差をひっくり返され、8強入りを逃している。
もちろん、力関係(対戦相手との実力差)が勝敗を左右する大きな要素だから、これらを一緒くたにして語るのは乱暴だが、概して「終わらせ下手」という問題意識を持つことに不都合はないのだろう。何しろ、2点差が一番危ない――という指摘が、たびたび持ち上がるくらいだ。