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成熟し続けるフロンターレが得た、
負けて連覇したという稀有な経験。
posted2018/11/12 17:30
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
J.LEAGUE
11月10日、ヤンマースタジアム長居で行われたセレッソ大阪戦。
後半に失った1点のビハインドを取り戻すべく猛攻を仕掛け続けていた川崎フロンターレだったが、セレッソゴールがこじ開けられない展開が続いた。幾度となく訪れたセットプレーも、思うように決定機につながらない。
まるでちょうど1年前の11月、同じ相手に涙を飲んだルヴァンカップ決勝を思い出すようなジリジリとする試合展開のまま、時間だけが過ぎていった。
それでも川崎は諦めなかった。
同点、そして逆転を狙う。
後半43分、ゴール前の混戦からペナルティエリア前でこぼれ球を拾った水沼宏太に対して、周囲にいた中村憲剛、車屋紳太郎、知念慶、鈴木雄斗が素早く切り替えて、四方から一斉に取り囲む。鈴木のスライディングタックルで出しどころを失った水沼は、たまらずバックパスを選択した。
その曖昧なボールの行方を、知念は見逃さなかった。C大阪のDF山下達也より一歩先にボールを触り、身体をぶつけられながらも突き進むと、飛び出してきたGKキム・ジンヒョンに足をかけられて転倒。次の瞬間、村上伸次主審がPKを宣告した。5000人が駆けつけたと言われる川崎サポーターが大きく沸くと、知念はガッツポーズを決めた。
「途中から出た選手が頑張らないといけないと思って、がむしゃらにやっていた。(PKの場面は)ボールがズレて、相手のセンターバックも少し戸惑っていた。スピードを上げていったら、うまくボールを取れた。GKが出遅れている感じも間接視野で見えていた。(PKを)もらいにいくような触り方だったかもしれないけど、うまくファールをもらえた」(知念慶)
このPKを家長昭博が冷静に決めて、1-1の同点。
時間はロスタイムに突入しようとしていたが、同点に追いついた川崎の選手たちは、ボールをセンターサークルに戻し、逆転を狙いに行った。