プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人の下剋上を許さぬカープの凄み。
四球数とベンチワークが両者の差。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/10/19 12:00
菊池涼介に勝ち越し3ランを浴びた畠世周。畠はポストシーズンでの活躍を期待されていたが……。
広島が誇る圧倒的な“四球力”。
今季の広島の強さを示すデータがある。
チーム打率2割6分2厘はヤクルトの2割6分6厘、中日の2割6分5厘に次ぐリーグ3位にもかかわらず、チーム総得点721点はヤクルトの658点、中日の598点、そして巨人の625点を大きく引き離している。
大きな理由が両リーグを通じてダントツの599個という四球数だった。
3番の丸佳浩外野手の130個を筆頭に鈴木誠也外野手が88個、田中が75個など、とにかく四球を奪いとる選球眼がずば抜けているのだ。
巨人の四球数は465個。この134個の違いがそのまま得点数だけでなく、順位の違いにも表れているとも言って過言でないかもしれない。
その広島の“四球力”が土壇場で逆転の引き金となる。
「やっぱりあの四球やろ」
1点を追う8回だ。
2死から代打の松山竜平外野手が打席に立つ。
その松山がフルカウントから、畠が真ん中低めに落としたフォークをきっちり見切って歩いた。
「やっぱりあの四球やろ」
試合後の巨人・村田真一ヘッドコーチの言葉だ。
土壇場で際どいコースを見切って奪った四球は、これぞ広島打線というものだった。2死から四球で走者を出したことは、巨人にとってはミスといえばミスだったかもしれない。点差は1点。しかも打席には一発のある松山である。バッテリーが慎重に慎重を期すのも仕方ないところだった。
「決して甘い球は投げない」
そう警戒して、際どいコーナーを狙って歩かせてしまったこの四球を、責めるのは酷というものかもしれない。
ただ、問題はこの四球を出した後の甘さだ。