プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人が原新体制に託す巨大な宿題。
指導者も、育てる必要があるのだ。
posted2018/10/20 12:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
一瞬にして魔法は解けた。
セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージは、広島の3連勝という圧勝で決着がついた。シーズンで広島が残した対巨人17勝7敗1分という圧倒的な数字がそのまま出たシリーズだったが、その一方で巨人の戦いを振り返ると、勝負の分岐点は第1戦の1回にあったと言えそうだ。
この回、広島のエース・大瀬良大地投手に対して巨人は先頭の坂本勇人内野手が中前安打で出塁。続く2番・田中俊太内野手の4球目に高橋由伸監督はエンドランを仕掛けたがこれがファウルと不発に終わった。次の5球目を打って出た田中の打球は二塁併殺打に終わり、結果的にはこの回は三者凡退の無得点に終わっている。
そこからだ。
ファーストステージではシーズン中とは打って変わった積極果敢な采配が目を引いた高橋監督だったが、魔法が解けたようにシーズン中と同じようなサインが目立つようになってしまったのだ。
チーム力に加え、ベンチの差もあった。
第1戦でも、1点を追う3回無死一塁で小林誠司捕手にはエンドランで一気の逆転を狙いに行くのではなく、送りバントでまず同点を命じた。
継投でも、第2戦で好投していた先発の田口麗斗投手を6回67球でスイッチしたにもかかわらず、2番手の畠世周投手を引っ張りすぎて菊池涼介内野手に致命的な3ランを浴びて試合が終わってしまった。
そうして第3戦は、2回にわずか2球で先制点を奪われると、もはや抵抗の手立てもないままにズルズルと敗退していったのである。
もちろんチーム力の差はCS開幕前から分かっていたことだ。
ただ、1点をいかにとって、1点をいかに防ぐか。そういう選手への教育とベンチワークが、高橋巨人では最後まで徹底できなかった。ましてや短期決戦は、シーズン中以上にベンチにかかる比重は大きくなるはずなのである。