プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人の下剋上を許さぬカープの凄み。
四球数とベンチワークが両者の差。
posted2018/10/19 12:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
同じような負け方をシーズン中に何度も見た。終盤の逆転劇は今季の広島の得意芸であることはいうまでもない。
だからこそ巨人・高橋由伸監督は思い切った決断で、試合の主導権を握ろうとしたのである。
「僕の中ではリードしている展開は2人でと考えていた。田口は今シーズン1番、いいんじゃないかというくらいに頑張ってくれていた」
敗戦の三塁側通路で巨人の指揮官はこう言葉を絞り出した。
6回67球で好投の先発・田口麗斗投手から継投に入った決断は、1度はハマったかに見えた。7回を2番手の畠世周投手が完璧に抑え、回またぎの8回も2死まで1人の走者も許さなかった。あと1人、畠が広島打線を抑えきって9回には守護神・山口俊に繋いで逃げ切る。
だが、そんな指揮官の思惑は無残に崩れた。
この敗戦……1つだけ痛恨事が!
2死から代打・新井貴浩内野手の適時二塁打で追いつかれ、さらに田中広輔内野手を歩かせた2死一、二塁から菊池涼介内野手に決勝3ランを浴びて撃沈した。
田口をもう1イニング投げさせていれば……新井に同点打を浴びた場面か、遅くとも田中を歩かせた場面で山口にスイッチすべきだったのではないか……。
様々な考えがあるだろうが、それは結果論だ。高橋監督は決断をして、その決断で敗れた。もちろんその責は指揮官が負うものである。しかし、もし田口を続投させていても、畠から山口にスイッチしていたとしても、結果はどうなっていたかは分からないのだ。
ある意味、高橋監督にとって諦めのつくものだったはずである。
ただ、この敗戦には1つだけ痛恨がある。
それは巨人がやるべきことをきちっとやり切らずに、広島の逆転劇の引き金を引いてしまったことだった。
そしてその逆転劇の舞台を作ったのは、やはり今季の広島の強さを象徴するものだったのである。