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批判を恐れず実行しきる男・原辰徳。
なぜ今、この名将が呼ばれたのか? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2018/10/05 17:00

批判を恐れず実行しきる男・原辰徳。なぜ今、この名将が呼ばれたのか?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

前回、ジャイアンツの監督として最後のシーズンとなった2015年当時の原辰徳。再びこの勇姿が見られる!

では原辰徳とは、どういう監督なのか?

 後任候補として一本化されたのは過去2回、12年の在任期間で7度のリーグ制覇、3度の日本一の実績を誇る原前監督だった。

 3度目の監督復帰は異例中の異例の事態だ。

 それだけ球団がチームの現状に危機感を抱き、チーム再建を託せる能力を評価してのものだったということだ。

 原辰徳がどういう監督かというエピソードがある。

 それは2度目の巨人監督時代の2014年のある采配を巡ってのものだった。

「理解ができない」

 これは7月12日付のサンケイスポーツの人気コラム『ノムラの考え』の書き出しだ。筆者は球界の頭脳とも言われる野村克也元ヤクルト監督である。

 記事が厳しく批判しているのは、前日の11日に東京ドームで行われた巨人対阪神戦でのある采配についてだった。

スタンドがどよめいた内野手5人シフト。

 2対2の同点で迎えた6回に阪神はマウロ・ゴメス内野手とマット・マートン外野手のタイムリーなどで2点を勝ち越し、なお1死二、三塁の場面だった。

 2番手の左腕・青木高広投手が打席に左打者の今成亮太内野手を迎えると、原監督が一塁側ベンチから出てきて、マウンド上に選手を集めて守備陣形の指示をする。ここで異様だったのは集められたのが内野手だけでなく、外野手も含めたグラウンドのすべての野手だったことだ。

 輪が解ける。

 すると二塁の片岡治大内野手が二塁ベース付近に移動し、左翼の亀井善行外野手が内野用のグラブに持ち替えて、そのまま一塁手と二塁手の間の守備に入った。

 外野手1人を内野に配した内野手5人シフト。外野は左中間に松本哲也外野手、右中間に長野久義外野手が位置した。

 スタンドがどよめいたのはいうまでもない。

 この奇策に反応して阪神ベンチが今成に代えて、代打にスイッチの西岡剛内野手を送る。

 すると1度は亀井が左翼の定位置に戻ったが、カウント2ボール2ストライクと追い込むと、今度は右打席の西岡に合わせて亀井が遊撃手と三塁手の間に陣取り、再び内野手5人シフトが決行されたのだ。

 そして5球目を西岡が明らかな右狙いで右翼にファウルを放った後の、運命の6球目。青木の136キロの真っすぐがやや高めに浮いたところを、西岡がはじき返すと打球は誰もいない中堅に弾み、2人の走者がホームを駆け抜けた。

 結果的に試合は5対12の大敗だった。

【次ページ】 翌日の新聞では多くの評論家が酷評。

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