プロ野球亭日乗BACK NUMBER
批判を恐れず実行しきる男・原辰徳。
なぜ今、この名将が呼ばれたのか?
posted2018/10/05 17:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
まだクライマックスシリーズ進出を賭けた戦いが残る中で、巨人・高橋由伸監督の今季限りでの辞任が明らかになった。
「監督を引き受けた時点からチームの勝敗の責任は監督が背負うと思ってやってきたし、その思いは3年間、変わっていない。チームの成績が良くないというところで責任をとらなくちゃいけない」
山口寿一オーナーによる辞任発表を受けて、遠征中の広島で取材に応じた高橋監督は決断の理由をこう語ったという。
2015年オフの監督交代劇はファンの誰もが覚えている。
原辰徳前監督の退任に伴い、球団は現役続行を望んでいた高橋由伸のユニフォームを脱がせて監督に指名した。
幹部候補生として兼任コーチの経験はあったが、指導者としての準備不足は明らかだった。しかしそれからの3年間は勝利と育成という二律背反の命題を求められる巨人の監督として、歴代監督と同じ宿痾を背負いながらチームを率いる立場に変わりはなかった。
編成面など球団の責任も重い。
「戦力の補強をはじめ、監督に対して十分なバックアップをできていなかった。私からは申し訳なく思っていると伝えました」
退任を明らかにした山口オーナーが詫びたように、球団の責任も重い。
今季はスコット・マシソン投手とアルキメデス・カミネロ投手という8、9回を任せる2人の外国人選手がともにケガで戦線離脱。それに代わる投手が見つからないままに中継ぎ、リリーフ陣が崩壊するなど、編成面での失敗もチーム成績に大きく響いている。
その中で必死に戦い、我慢して選手を育てた。
ようやく岡本和真内野手や吉川尚輝内野手、重信慎之介外野手や田中駿太内野手と若手野手の台頭は見えてきたが……。
育ててきた選手たちと栄光を掴む前に、自ら身を引く決断を下さざるを得なかった。