プロ野球亭日乗BACK NUMBER
批判を恐れず実行しきる男・原辰徳。
なぜ今、この名将が呼ばれたのか?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/10/05 17:00
前回、ジャイアンツの監督として最後のシーズンとなった2015年当時の原辰徳。再びこの勇姿が見られる!
「でも論評は論評だから」
2012年、'13年とリーグ連覇した巨人は、この時点ですでにリーグ首位に立ち3連覇へとひた走っている時期だった。ただ'13年は日本シリーズで楽天に敗れて連続日本一は逃していた。
実際にそういう場面が起こるか、起こらないかは分からない。ただ、いつかあるかもしれない1点を守りきらねばならない究極の勝負を想定して、選手に経験を積ませる機会を探していたのである。
「失敗したら批判されるのはわかっていた。でも論評は論評だから、みなさんが観て思ったことを言ってくださいということだね」
批判を恐れずそれを実行できる胆力がある。
単純な試合の勝ち負けという視点とは背景が違うということだ。このときの内野5人シフトとは、もっと大きな視点でチームを動かした結果のものだった。
この場面では野村さんをはじめほとんどの評論家が、その背景を見極められずに批判が噴出した。
それを承知で批判を恐れない決断力と実行力がある。それがリーダーとしての原辰徳の真骨頂なのだ。
原監督が今こそ必要な理由。
巨人は4年連続で優勝から遠ざかり、今季は12年ぶりの負け越しとどん底にいる。
ファンの間では今回の高橋監督の退任には異論もあるだろう。高橋監督の続投論や松井秀喜さんの復帰待望論など様々な意見があるかもしれない。
確かに監督を含めたチームの「若返り」という点では、原前監督の復帰は時代に逆行するかもしれない。しかしどん底に沈んだチームを再建するには、大胆な決断力と批判をおそれずにそれを進めていく実行力なくしてはありえないということだ。
そう考えると監督・原辰徳の現場復帰は、必然だったといえるのかもしれない。