酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
引退試合を公式戦に組み込むことに
違和感を持つのはおかしいこと?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2018/09/27 10:30
引退する選手を拍手で送りたい気持ちは誰もが一緒だ。それだけに、スッキリした気持ちで見られる機会を用意してほしい。
NPBが公式戦での引退試合を奨励。
しかし平成に入ってから、引退を表明した選手が引退試合の当日に一軍登録をされてベンチ入りし、打者1人、1打席だけ野球をするのが通例になった。相手チームの選手は引退する選手に花を持たせるようなプレーをするのだ。
チームもこれを大々的に宣伝し、観客動員を促進している。最近は1000本安打とか100勝とかそれなりの成績を残した選手だけでなく、控え選手やわき役も引退試合をしてもらえるようになった。加賀繁の9年間の成績は279試合12勝22敗1セーブ、72ホールド、防御率4.03だ。
NPBは、2017年から引退試合を行う選手は1試合に限り28人の出場選手登録の枠を超えて登録することが可能となる特例措置を行っている。
つまり、NPBは「公式戦での引退試合」を奨励していることになる。
引退を表明した野球選手がファンに別れを告げたいと思い、ファンも引退選手に最後の声援をしたいと思うのは自然なことである。そのこと自体は何も問題はない。しかしそれをわざわざ「公式戦」でやる必然性がどこにあるのか? 「公式記録」になぜ残さなければならないのか?
「公式記録」は、1936年の日本プロ野球開幕以来、82年にわたって公式記録員が書きつないできた唯一の「プロ野球の正史」だ。そこには「真剣勝負」の記録だけが記されていてほしいと思う。
順位に関係無い消化試合なら……。
これまで公式戦での引退試合はほとんどが、チームの順位に関係がない消化試合で行われた。しかし加賀繁の「引退試合」は、チームのポストシーズン進出をかけた非常に重要な試合で行われたという点で異例だ。
これが許されるのなら、巨人は3位死守がかかった必死の試合の9回裏、あと1人で勝利という場面で、先日引退を表明した杉内俊哉をマウンドに上げ、相手チームの「ご祝儀三振」を期待することができるということになる。「引退試合」には、何の規定もないのだから、9回2死から「引退試合」もできるということになりはしないか。