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男子100m、日本選手権での充実ぶり。
「できない」という固定観念の打破。
posted2018/07/01 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
6月22日から24日にかけて、山口県で陸上の日本選手権が開催された。
中でも注目を集めたのは、23日に決勝が行なわれた男子100mである。この日の観客数は2万658人、陸上の国内大会としては、多くの人々がつめかけた。
スモークが焚かれる中、出場する選手が1人ずつアナウンスとともにトラックに登場すると、そのたびに大きな拍手が沸き、歓声が飛ぶ。
レースも期待に違わぬ熱戦となった。
サニブラウン・アブデルハキームは欠場したが、他の有力選手が一堂に会しての激しい競争がスタートから繰り広げられる。
トップでゴールを駆け抜けたのは、山縣亮太。10秒05と大会タイ記録で5年ぶりの優勝を遂げた。2位にケンブリッジ飛鳥、3位は桐生祥秀。昨年、日本初の9秒台となる9秒98をマークした桐生でも容易に勝てない状況に、現在の日本男子短距離のレベルの高さがうかがえた。
ここ5年間の優勝者は毎回異なる。
振り返ればこの5年間、優勝者は毎回異なり、複数回優勝した選手はいなかった。この事実は選手層の厚みを裏付けている。
近年、日本男子短距離の躍進はめざましい。
2016年のリオデジャネイロ五輪400mリレーには山縣、飯塚翔太、桐生、ケンブリッジで臨み、2008年の北京の銅メダル(ジャマイカ選手のドーピング発覚により銀に繰り上げの見込み)に続く、銀メダルを獲得した。
しかもアンカーの段階まで優勝したジャマイカと先頭を競う、堂々としたレース展開での2位だ。さらに昨年の世界選手権では、山縣、ケンブリッジにかわり多田修平、藤光謙司が桐生、飯塚と組んで銅メダルを獲得した。
リレーでの好成績はもちろんのこと、選手個々の力も充実している。