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開幕2日前に解任も結局1位突破。
スペインにイエロ監督は必要か?
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph byFranck Faugere
posted2018/07/01 07:00
セルヒオ・ラモスキャプテンの下、全員が上下の差無くプレーしているのが、今のスペイン代表である。
我儘なスターがひとりもいないチーム。
「2年間かけて準備してきたものを、2日で変えようとは思わない」
監督就任会見でイエロはこうコメントした。指導者よりも同伴者という意識だったのだろう。彼はこう続けた。
「理性を働かせながら首尾一貫させる。選手たちは素晴らしいグループを形成しながらワールドカップ予選を戦った。彼らに望むのは現状を維持することだけだ。チームは成熟しており、何を目指しているのか、何をするべきであるのかを十分に分かっている。確固としたキャラクターもパーソナリティーもある」
現実にイエロが選択したのも、チームをなすがままに任せることだった。
実際、スペイン代表には確固としたスタイルと方法論があった。ロペテギがすべてを組織して構築し、クリスティアーノ・ロナウドやメッシ、ネイマールを前にしても一歩も引かずに戦えるチームに仕上げていた。
換言すれば、過分なエゴは誰も持たず、我儘なスターはひとりもいないチームであった。
レアルとバルサの確執も今やなく……。
代表チームにおけるレアル組とバルサ組の確執も、モウリーニョとグアルディオラが両クラブを離れて以来小さくなっていた。
ふたつの巨人は、以前のように対抗心をむき出しにすることもない。それが代表チームの選手たちに安定感を与えていた。
問題が存在しないから、解決のために外部の権威を頼る必要もない。グループの結束力は高まり、内部のヒエラルキーも明確になった。
権力を掌握したのはチャンピオンズリーグ3連覇を果たしたレアルのセルヒオ・ラモスで、他の選手たちは彼に従順に従った。
監督に就任したときからロペテギは、ラモスにリーダーシップを執るように求めた。ラモスの答えも「イエス」だった。そしてそれが新たなプロジェクトのスタートとなった。