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開幕2日前に解任も結局1位突破。
スペインにイエロ監督は必要か?
posted2018/07/01 07:00
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph by
Franck Faugere
日本代表どころの騒ぎではなかった。スペイン協会がフレン・ロペテギ代表監督の解任を発表したのは、ワールドカップ初戦となるポルトガルとの大一番を2日後に控えたときのことだった。大会後のレアル・マドリー監督就任が直前に明かされたとはいえ、まさに前代未聞である。怒り心頭のスペイン協会の断固たる処置であったことがよくわかる。
そんな状況にもかかわらず初戦でポルトガルと引き分け、イランとモロッコには手こずったもののスペインは1位でグループBを突破した。
飛行機でいえば、パイロットのいない自動操縦ともいうべき状態も、プレーのクオリティには何も影響を与えてはいない。なぜそんなことが可能なのか……。
『フランス・フットボール』誌6月19日発売号では、いったい何がスペイン代表に安定感を与えているのかを、ティエリー・マルシャン記者が紐解いている。
監修:田村修一
'89年ミシガン大バスケ部と同じ境遇!?
ジェラール・ピケは次の逸話をよく覚えている。フレン・ロペテギ監督の突然の解任の翌日、ピケは1989年の全米大学バスケットボールにおけるミシガン大学の例を引き合いに出して的確にコメントしたのだった。
当時ミシガン大学のヘッドコーチであったビル・フリーダーは、NCAA開幕を2日後に控え突然その任を解かれた。次のシーズンにライバルである大学のコーチを引き受けたからというのが解任の理由だった。唐突に指導者を失ったミシガン大学だったが、監督経験のまったくないアシスタントコーチに率いられ、3週間後にはNCAA優勝を果たした。
7月15日のルジニキ・スタジアムで、“ロハ(スペイン代表の愛称)”がワールドカップを再びその手に掲げるかどうかは定かではない。今、分かるのは、2年前に就任して以来ずっと無敗(20戦14勝6分)を誇っていた監督を失っても、ロハのプレースタイルとそのダイナミズム、メンタルの強さには何の変化もないということだけである。