ぶら野球BACK NUMBER
宇都宮餃子と岡本和真のHRを堪能!
風に吹かれて男のぶらり野球ふたり旅。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasutaka Nakamizo
posted2018/06/03 11:30
宇都宮駅前にはドーンと「ようこそ! 餃子の街へ!」という看板が。餃子をガッツリ食べて野球観戦……至福である。
何もない空間に球場だけがある風景。
場内に入場して一塁側内野席に座ると、異様にボールが見やすいことに驚く。
東京ドームと違って屋根がないから? いやそれだけじゃなく、球場周辺にビルのような高い建物が皆無なのである。
白球が気持ち良さげに空高く舞い上がる。5月後半の夜は暑すぎず寒すぎず快適だ。
試合は初回から巨人打線が効率良く得点しリードを広げる。先発の山口俊も強力カープ打線を無得点で抑えている。
やがて、そこら中で「○○ちゃんのお母さ~ん」とか「○○社長!」なんて呼び合う声が頻繁に飛び交う。地元の知り合いだらけの客席。プロ野球が行われる球場が地域の社交場と化すわけだ。もちろん自分は見知らぬ土地で知り合いはいない。それでもやたらと自由で解放感がある、この雰囲気は何度体験しても心地いい。
「人は皆、狂えるものを探している」
そうこうする間にも「新幹線で速報チェック中!」「もーちょいで着きます!」とLINEが入る。そして、4回表最中に汗をかき嬉しそうに、ひとりの男がやって来た。
今回のぶら野球の相棒、スタイリストの伊賀大介氏である。
共通の知り合いの編集者や記者と野球観戦に行く内に顔なじみとなり、年末にはお互い自慢の野球雑誌やスポーツ新聞コレクションをひたすら見せ合うという、なんだかよく分からない忘年会を開催したりしている。
目が合うなり「お疲れっす!」なんつってがっちり握手。聞くところによると、午後まで伊豆でロケがあり、スーパービュー踊り子と新幹線とタクシーを乗り継いで計4時間かけて清原球場まで辿り着いたらしい。
なのに、ひと休みする間もなく「うぉー雰囲気やべぇ」と感激しつつリュックから選手名鑑を取り出し必死にチェック。いやいやなにもそこまで……って、伊賀氏は基本的にガチである。
仕事も遊びも読書もやるからには本気で楽しむ。対象に対して妥協しない。そんな人間は信用できる気がする。いつの時代も、一種の狂気と熱狂は背中合わせだ。リリー・フランキーの野球コラムの言葉を借りれば、「人は皆、狂えるものを探している」のである。