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相撲界のセカンドキャリア整備を。
学生力士たちが公務員と迷う現状。
posted2018/06/04 07:00
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph by
Kyodo News
皆さんは力士が引退後にどのように生計を立てているか、ご存知だろうか。
最初に思いつくのは、親方になることだ。相撲部屋を引き継ぎ、もしくは興し、運営する者もいるし、部屋に所属してコーチのような役割を担う者もいる。
ただ指導するだけではない。親方には巡業を取り仕切る役割もあるし、勝負審判を務める役割もある。国技館の入り口でもぎりをするのも親方の仕事だ。さらには館内の場内整理を行うこともある。番付を編成することも、時には売り子になることもある。これだけ多くの役割を担っているのが親方なのである。
だがこの親方というのは、年寄名跡を保有する105人に限られている。
そしてここからが重要なのだが、年寄名跡を取得するには一般的には最高位が小結以上か、幕内在位20場所以上か、あるいは関取在位30場所という条件をクリアする必要がある。
少し条件が緩和されるという条文もあるが、基本的にハードルはあまり変わらない。2017年のデータを見ると、関取というのは全力士の上位10%だ。これが幕内となると上位6%である。
親方になれるのは1学年で3人ほど。
このような条件を満たす力士の多くは、30歳前後で力士としてのキャリアを終える。親方の定年が65歳で、現在では70歳まで再雇用されるケースもあるが、平均化すると1つの学年でたったの3名しか親方になれない計算である。
実際のところは65歳以前に亡くなったりするケースもあるが、多く見積もっても5名程度だろう。この数字からも、引退後も大相撲の世界に残るということは難易度が高いということがお分かりいただけると思う。
彼らは年間で1000万円を超える収入があると言われ、部屋を運営していれば別途収入を得ることも可能である。そして何より、好きな相撲に関わりながら生きていくことができる。力士として実績を残した者には素晴らしい第2の人生が用意されているのが大相撲の世界である。
では、親方になれなかった大多数の力士達は引退後どうなるのだろうか。