大相撲PRESSBACK NUMBER
相撲界のセカンドキャリア整備を。
学生力士たちが公務員と迷う現状。
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2018/06/04 07:00
栃ノ心の大関昇進はめでたいが、その陰で多くの力士が静かに引退していくことも忘れてはならない。
大相撲の人材難は深刻だ。
だからこそ、このタイミングで力士のセカンドキャリアについてもう少し考えて欲しいのだ。
相撲の経験を活かせる、大相撲での苦労が待遇面にも反映される道が無ければ、大相撲の世界を目指す若者が今後減ることはあっても増えることは無いだろう。横綱になれば年収4000万円というスモウドリームよりも、公務員という道を選ぶ若者が増えていることは由々しき事態なのだ。
今場所の幕下では、実に40人近い関取経験者たちが浮上を目指して連日土俵に上がり続けた。大相撲の世界で、まだ成し得ないこともあるのだろう。だが、大相撲の世界に残るという僅かな可能性に賭ける彼らの多くは、その想いを成就できずに相撲界を去ることになる。
あの騒動を無駄にしないためにも、大相撲は様々な意味で変革を進めていくべきだと私は思う。公傷制度とも向き合わねばならないし、大相撲という独自の文化の中で、文化の取捨選択をどのようにするかということも大きな課題だ。
セカンドキャリアの問題は、その最たるものだ。高安をのぞく横綱大関、そして新大関の栃ノ心すら30代であることを考えると、もう残された時間は少ない。
「土俵の充実」という言葉を発するのは簡単だ。だがそれだけでなく、何らかの行動が必要な時期に来ている。それほど今の大相撲の人材難は、深刻なのである。
大相撲よ、変革を。