甲子園の風BACK NUMBER
『サウスポー』『狙いうち』は飽きた!?
甲子園がどよめいた近江の新応援とは。
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byOHMI HIGH SCHOOL WIND ORCHESTRA
posted2018/04/02 17:00
ぎっしりと近江高校の生徒と関係者で埋まったスタンド。その斬新な応援は、今大会の注目度ナンバーワンとなった。
最初は野球部に断られた新曲の提案。
近江は2001年夏の甲子園で準優勝を経験。樋口さんは、次に出場した2003年のセンバツで、「うちならではのオリジナリティを出したい」と、野球部に新曲を提案。
「たしかJ-POPだったと思うんですけど、『他の学校がやっていない曲をやらないか』と野球部に提案したところ、まったく受け入れられずに撃沈しました(苦笑)。試してみてはくれるのですが、最終的には『今まで通りでいい』と、元の応援に戻ってしまうんです」
樋口さんは、その後も何度か新曲提案を試みるも、一度も定番入りしたことがない。
教員生活19年、「どこもほんま同じ曲ばっかりやな」と悶々とし続けていたが、年数を重ねるごとに、野球部が受け入れてくれない理由がなんとなくわかってきた。単純に、「コミュニケーション不足ではないだろうか」と。
「今思い返すと、野球部の意見を尊重せずに、自分主導で進めていたように思います。実際に応援するのは彼らなのに、ちょっと強引だったかもしれません」
「手拍子がしやすいテンポの曲」と「よく鳴る曲」。
今センバツでは、野球部の応援団長で、3年生の加藤大地さんから「野球応援を変えたい」という相談があり、樋口さんは初のフルリニューアルに挑戦することに。
他校とは違うオリジナリティを出すため、自身がもともと好きだった洋楽を聴き漁り、応援向きのフレーズをひたすら探し続けた。
こだわったのは2点。
「手拍子がしやすいテンポの曲」と「よく鳴る曲」だ。
速すぎる曲だと、手拍子がついていけないため、速度記号が140くらいの曲をセレクト。マーチングも指導している経験から、「金管の生かし方がうまく、音がよく響く」という、海外のマーチング楽譜を取り寄せた。