甲子園の風BACK NUMBER
『サウスポー』『狙いうち』は飽きた!?
甲子園がどよめいた近江の新応援とは。
posted2018/04/02 17:00
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph by
OHMI HIGH SCHOOL WIND ORCHESTRA
第90回記念選抜高校野球大会6日目、松山聖陵vs.近江戦。鮮やかな“近江ブルー”に染まった三塁側のアルプススタンドから流れてきたのは、ファレル・ウィリアムズの『Happy』やオフスプリングの『Pretty Fly』など、高校野球では珍しい洋楽の応援曲だ。
高校野球の応援曲といえば、『サウスポー』や『狙いうち』などの懐メロや、『ルパン三世のテーマ』『宇宙戦艦ヤマト』などのアニメソング、『アフリカン・シンフォニー』あたりが定番で、実に多くの学校が演奏する。天理や龍谷大平安、智辯学園など、オリジナル曲を持つ学校もあるが、全国的に見ると、前者のほうが圧倒的に多いのが現状だ。
ご多分に漏れず、近江もこのような“よくある応援”だった。1999年から吹奏楽部の顧問を務める樋口心さんは、こう振り返る。
「当時は野球応援のことは何もわからず、自分が顧問を務める前からあった曲を使っていました。最初は何も疑問に思わずに演奏していましたが、試合で相手校の応援を聴いていると、うちも含めてどこも同じ曲ばかり。次第に『応援を変えたい』と思うようになりました」
新曲と言っても、世間的には古い曲。
『サウスポー』にしろ『狙いうち』にしろ、多くの学校で同じ曲を使うのには理由がある。
それは……昔から伝わる、野球部の伝統だ。
応援曲は野球部のリクエストで決めることが多く、吹奏楽部は彼らが好きな曲を演奏する。大抵の場合は代々受け継がれている応援曲リストがあり、その中から選ぶのだが、たまに新曲が入ることもある。
新曲といっても、『紅』(X JAPAN)や『夏祭り』(JITTERIN'JINN/Whiteberry)など、現役高校生が生まれる前にリリースされた曲も多い。
彼らのいう“新曲”とは、いわゆる「今年のヒット曲」ではなく、「今シーズンから取り入れる曲」のことをいう。他校が使っている曲を気に入り、自校でも導入することがほとんどだ。
このような事情から、どこの学校も同じような応援になっていくのだ。