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中卒“叩き上げ関取”がまたひとり。
白鷹山を育てた元安芸乃島の心意気。 

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佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byKyodo News

posted2018/03/31 11:00

中卒“叩き上げ関取”がまたひとり。白鷹山を育てた元安芸乃島の心意気。<Number Web> photograph by Kyodo News

元安芸乃島が育てた白鷹山。じっくりと育てられた大器にかかる期待は大きい。

手取り足取りの熱血指導が高田川流。

 17人の力士を擁す高田川部屋に、現在学生出身力士はいない。それは高田川親方の方針なのだろうか。

「いや、大卒力士を取らないとは言ってないんですよ。俺の、元安芸乃島の弟子になりたいっていうなら考えてもいいよ、ということなんですけど、そういう学生がいないだけでね(笑)。小・中学校で相撲が強いって、体が大きければ勝てるんですよ。でもそれだけじゃプロでは勝てませんから。変に知恵が付いて理論こねるよりも、純粋に何の疑いもなく付いて来てくれる子が、一番強くなるんですよ」

 先代高田川(元大関前の山)から'09年に部屋を継承し、江東区清澄に新築された高田川部屋の稽古場には、「順番を待たずにいつでもやりたい時にできるように」と、てっぽう柱が5本もそびえ立っている。師匠自らまわしを締めて土俵に降り、手取り足取りの熱血指導が“高田川流”である。

 稽古法も独特だ。緊張感が張り詰め、泥だらけになってガンガンとひたすら番数を重ねる日と、師匠曰く「確認の日」がある。「相撲は頭で考えて取らなければいけない」といい、まるで授業のように、相撲の実技や動作ひとつひとつを言葉に変え、理論をも教授する日のことだ。動きを一時中断し、汗だくになりながら、まわし姿の師弟の会話が稽古場に響く。

「親方、ここがどうしてもこうなっちゃうんですけど」

「それはな、もっとこの腕の角度をこうしてな――」 

 ほの暗い土俵の上、教えを乞う力士たちの目は、まっすぐな光を放ち、師匠の目に反射する。

玄関前で師匠の帰りを待ち構えて。

 高田川部屋では、イマドキの相撲界では珍しい光景をも目にする。酒を飲まない高田川親方は、本場所の勤務を終えるとまっすぐ部屋に帰る日が多い。それまでTシャツ姿で寛いでいた弟子たちは一斉に着物やゆかたに着替え、玄関前で師匠の帰りを待ち構えるのだ。師匠が車から降りると、力士たちがわれ先にと歩み出て師匠を囲む。

「お陰さんで給金直しました(勝ち越しました)!」

「おう、今日の相撲はよかったんじゃないか」

「○○さんからご祝儀戴きました!」

「おう、明日負けたら返せよぉ(笑)」

【次ページ】 稽古さえ積んでいれば一気に強くなれる。

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