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選手権決勝、前橋育英の小さな伝説。
“かき消される声”とハンドサイン。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2018/01/12 08:00
前橋育英・田部井涼のシュートを流通経済大柏・関川郁万が守る――。白熱した決勝戦の分水嶺となったのは経験値だったかもしれない。
流経柏・本田監督が試合後に触れた日程問題。
「高校サッカー 過密日程に苦言」
2017年度の全国高校サッカー選手権、試合終了直後に大きな反響があったのは、この報道だった。
前述の通り、両校は高校生離れしたハイレベルな試合を見せた。それと同時に注目されたのは、流通経済大柏を率いる本田裕一郎監督の会見である。
詳細は各メディアがすでに報じているが、簡単に説明すると、今大会の開催期間がわずか10日間で、超過密日程となったことに一石を投じたのだ。また長友佑都らかつて選手権に出場した選手も、自身のSNSで試合間隔について意見を提示している。
近年の選手権は12月30日に開幕し、成人の日に決勝を開催するという流れが定着している。今年度の場合、成人の日は8日に設定されたため、いわゆる“連闘”が2日と3日、5日と6日の2回あったわけだ。
例えば決勝が13日に実施された第92回大会では、準々決勝が5日、準決勝が11日と間隔が空いている。それと比べても、初戦の2日から決勝の8日までの1週間で5試合をこなさなければならない日程は、やはり過酷だったと言える。
「何が進化して、何がいけないか検証していきたい」
今回大きく報道された理由の1つは、豊富な指導歴を持ち、選手権を熟知する本田監督からの提言だったことだ。会見では「96回も大会を重ねてきて、何がどのように進化してきたのか、何がいけないか検証していきたいと思います。ぜひ(メディア側からも)発信して欲しいと思います」とも表現している。
日程への提言が話題になるのも、選手権がそれほどまでに存在感が大きいからこそだ。前橋育英を悲願に導いたハンドサインも、大舞台だから生まれた“小さな伝説”なのだろう。