“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
前橋育英と流経柏の凄すぎる決勝戦。
高校サッカー離れした“戦術バトル”。
posted2018/01/09 12:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
AFLO
まさに“死闘”だった。
第96回全国高校サッカー選手権大会決勝・前橋育英vs.流通経済大柏の一戦は、0-0で迎えた後半アディショナルタイム、延長戦突入かと思われた瞬間にピリオドが打たれた。
90+2分、前橋育英のMF田部井涼がゴール前にロビングを入れると、FW榎本樹が反応してバックヘッドでゴール前に落とす。これに反応したFW飯島陸が反転シュートを放つと、流通経済大柏DF三本木達哉が身体を張ってブロックしたボールが、榎本の元に転がった。榎本は迷うことなく右足を振り抜き、強烈なシュートをゴールに突き刺した。
土壇場で試合の均衡を崩すゴールが決勝弾となり、前橋育英が悲願の選手権初制覇を果たした。
前橋育英と流通経済大柏。
このファイナルは今年度の高校サッカー界において“頂上決戦”と言える一戦だった。
4度目の対戦、勝敗を左右した戦術的成熟度の差。
昨年度の選手権ファイナリストと今年度のインターハイチャンピオン。
強豪ひしめくプリンスリーグ関東の1位と2位。
山田耕介と本田裕一郎の名将対決。
「お互い手の内は知りすぎている。何をやって来るかもイメージできるので、真っ向から戦いたい」
前橋育英の山田耕介監督が語ったように、両チームは今年度、公式戦で3度対戦している。
まずは4月22日のプリンス関東第3節。流通経済大柏のホームで行われた試合は、CB松田陸の2ゴール、MF五十嵐理人のゴールで、前橋育英が3-0で快勝。第2ラウンドはインターハイ準決勝で、CB関川郁万が圧巻の“V字ヘッド”を叩き込み、流通経済大柏が1-0で勝利した。そして第3ラウンドはプリンス関東第12節。2点を先攻した前橋育英に対し、流通経済大柏は1点を返すも、MF田部井涼が3点目を決めて勝負あり。関川が1点を返したものの3-2で前橋育英が2勝1敗と勝ち越した。
そして迎えた4度目の対戦。この戦いの勝敗を左右したのは、戦術的成熟度の差だった。