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女子ハンドボール日本代表の快挙。
欧州の強豪国に勝利するまでの道。
posted2017/12/20 08:00
text by
田口有史Yukihito Taguchi
photograph by
Yukihito Taguchi
「僕にいったい何をして欲しいんだ?」
12月1日から17日までドイツで開催されたハンドボール女子世界選手権。日本代表は予選リーグを3位で勝ち抜け、今大会で最終的に3位となったオランダと決勝トーナメント1回戦で対決。延長戦にもつれ込む死闘を繰り広げ、世界に存在感をアピールした。
躍進の影の立役者で、大会直前の11月にチームに合流した櫛田亮介コーチは合流初日、単刀直入にそう聞いたという。
日本ハンドボール協会で専務理事兼強化本部長を務める田口隆と、代表チームのマネージャーである栗山雅倫からの答えは……。
「“ハンドボールのトランスレート”をして欲しい」
だったという。
「アジアだけでなく、世界に通用するハンドボール」
思えばここ数年、女子ハンドボールを取り巻く状況は常にネガティブなものだった。
リオ五輪に向けて満を持して自国開催で挑んだアジア予選は、満員のファンの声援を受けながらも最終戦で韓国に21-35で完敗。その後に回った世界最終予選でもオランダ、フランスに敗れ、リオ五輪には28競技団体中、唯一男女ともに出場できなかった。
そして……東京五輪に向け、デンマーク人のウルリック・キルケリーを2016年6月に監督として招聘。
「アジアだけでなく、世界に通用するハンドボール」を標榜して新たなスタートを切った矢先に、日本協会内で内紛が起こってしまう。
その停滞ぶりは満員の駒沢体育館で行われた日韓定期戦で10点差の完敗という結果にも現れ、各メディアからは、開催国枠の剥奪の可能性もあるのではと懐疑的な目を向けられた。
「ウルリックがどんなハンドボールをしたいのか、7月の日韓戦を見ている段階では正直わからなかったですね」
櫛田はその時のことをそう振り返る。
「表面的なことはわかるんですよ。0-6と3-3のディフェンスを使ったり、7人攻撃をしたり、速攻を積極的に仕掛けたりとか。でも、どういう約束事でそういうプレーをするのか曖昧でした」