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女子ハンドボール日本代表の快挙。
欧州の強豪国に勝利するまでの道。
text by
田口有史Yukihito Taguchi
photograph byYukihito Taguchi
posted2017/12/20 08:00
世界選手権の初戦となったブラジル戦。この最初の山場を引き分けでしのいだことは大きい。
全敗したことで一気にチーム内で危機感が高まった。
日本代表の守備の要、永田しおりもこう話す。
「こんな……いまの雰囲気じゃダメだと。実はちょっと衝突があったんですよ。今回のメンバーは半分以上が世界選手権は初めてだったので、練習でも試合でも、それまで大会の考え方にギャップがあった。
目標はベスト8へ行きたいって言っているんですけど、それがどれだけ難しいことか、全く想像がつかない人も中にはいるし、一方で経験のある選手は、それがどれくらい追い込まなければたどり着けないのか理解している。それでみんなで大会への想いを話し合ったんです」
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この話し合いで、チームはひとつにまとまって行く。その過程では“引くくらい”選手を褒めてくれたという、ウルリック監督のポジティブな雰囲気作りもプラスになったという。
「選手でミーティングをしました。初めての人は不安もあると思うけれど、もっと自信を持って、みんなで助け合いながら、チームの目標として掲げている“Brave Heart(強い心)”を、全面的にもっと出していこうと話しました。
そうしたらみんな、勝ちたい想いとか、具体的な意見をどんどん出してくれるようになって。その雰囲気からブラジル戦に臨んでいったんです」
最初の山場ブラジル戦を、見事にドローでしのいだ日本。
そうして迎えた初戦のブラジル戦。
日本は、この初戦のブラジル戦を最初の山場だと想定していた。
序盤は3-3のディフェンスで高い位置から積極的プレスを掛ける攻撃的なディフェンスを見せる。オフェンスでも早いパス回しからのカットインなど、ライトバックの角南唯が躍動。彼女が活きることで両ウイングの池原綾香、松村杏里にもボールが回り序盤でリードを奪うことに成功した。自分たちのやりたいハンドボールが展開できた。
終盤追い上げられるもギリギリで持ちこたえ、何とか引き分けに持ち込むことができた。
元世界王者を相手に勝ち点を取れたという結果は、自分たちのやるべきプレーをしっかりやりさえすれば十分世界と戦えるという自信に繋がった。選手たちの顔つきも、「いける!」というものへと変わっていた。