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女子ハンドボール日本代表の快挙。
欧州の強豪国に勝利するまでの道。
text by
田口有史Yukihito Taguchi
photograph byYukihito Taguchi
posted2017/12/20 08:00
世界選手権の初戦となったブラジル戦。この最初の山場を引き分けでしのいだことは大きい。
外国人監督の意思を正確に伝える役割が必要だった。
それは選手も同じ思いだった。
監督がどういう意図で指示をしているのかが、完全に浸透していない状況だった。もちろん監督には通訳がいるが、言葉だけでは選手がその意図まで理解するのは難しい。
ウルリックがどういう構想を持って、どういったイメージでハンドボールをしたいと考えているのか――そのビジョンを汲み取って選手に準備をさせる。
また逆に、選手が何に困っていて、どういった事を知りたがっているのかを監督に伝える。
そんな“ハンドボールのトランスレート(通訳)”をする人材が必要だったのだ。
五輪より強いチームが集まると言われる世界選手権へ。
今回日本が出場した世界選手権には、本場ヨーロッパの強豪国の多くを含む24チームが参戦する。世界各地から12チームが参加するオリンピックよりも格式が高いといわれるほどの、厳しい大会でもある。参加チームは、まず6チームずつ4つの予選リーグに振り分けられ、そのうち上位4チームずつが決勝トーナメントへ進む。
今大会で日本と同グループに入ったのは、リオ五輪で優勝したロシア、ロンドン五輪2位のモンテネグロ、'96年アトランタ、'00年シドニー、'04年アテネ五輪と3連覇したデンマーク、'13年世界選手権優勝のブラジル、アフリカの強豪国チュニジアの5カ国だった。
次回'19年世界選手権(熊本)の自国開催、またその翌年に東京五輪を控え、どうしても決勝トーナメントに進んで結果を残したい日本ではあったが、まさに「死の組」と呼ぶに相応しいグループであった。
ところがその「死の組」突破へ向けて、世界選手権前に調整試合として参加したスペイン国際大会3試合、そしてオランダで行われたドイツ1部チームとのテストマッチで、日本代表は全敗してしまう。
その時の事を櫛田はこう振り返る。
「スペインでの最初の2試合は、自分のやりたい事をやったけど勝てなかった試合。後の2試合は、自分たちのやりたい事すらできなった試合。
それで選手達の間に危機感が出たんですよ。これはもう世界選手権では全敗どころか、5試合全部恥ずかしい試合をして、負けて帰ってくるんじゃないか、と」