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最後まで外崎に代打は送らなかった。
西武・辻監督、育成重視の1年目。
posted2017/10/17 12:15
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
最後も代打を告げることはなかった。
3年連続Bクラスのチームの再建を託された西武・辻発彦監督の1年目が終わった。
パ・リーグ2位でフィニッシュしながら、クライマックスシリーズ(CS)ファーストで敗退。最後の打者が、辻監督の秘蔵っ子とも言える大卒3年目の外崎修汰だったのは、どこか因縁めいている。
「(ファイナルへの進出ならず)残念です。今はそれしか言えない。負けるつもりはなかったですから」
辻監督は試合後、そう言葉を絞り出した。
改めてこの1年の辻采配を振り返ると、勝利と育成の狭間で奮闘したシーズンだった。
中日の二軍監督や一軍コーチなどを歴任してきた辻がチームに招かれたのは、王者への返り咲きとともに、ここ数年置き去りにされてきた若手の育成を求められてのものだった。
浅村、秋山に続く選手が現れてこなかった。
2008年に日本一に輝いたものの、それ以後の西武は下降線を辿ってきた。中島宏之のメジャー挑戦や細川亨、涌井秀章、片岡治大ら主力選手のFA移籍。今の時代、チームの核を担っていた選手たちが活躍の場を移すことは避けられない。それに対する若手の台頭が追いつかなかったのが問題だった。
2013年には浅村栄斗が打点王獲得、2015年に秋山翔吾がシーズン最多安打の日本記録を樹立するなどしたものの、それに続く選手が現れてこなかった。最後の日本一からまもなく10年を迎える西武にとって、若手の成長こそがチーム再建の鍵だった。
とはいえ、かつては常勝軍団を築いたチームだ。若手を育てると言っても、負けても良いというわけではなかった。「勝ちながら育てる」という難題に辻は取り組まなければいけなかった。